「地理」は、現実社会での経営に必要な理論

経営の基本ルールや、戦略、マーケティング知識を体系的に学ぶ

地理とは、地の理(ことわり)ことである。ここでいう地理とは、私たちが学校で習うものとは全く違うものだ。もちろん、その中には、立地戦略のような、地理的イメージのものも含まれるが、もっと広いものを意味し、地とは現実世界のことであり、現実社会での経営のために必要な理論を意味する。(内田游雲)

小さな会社の置かれている立場

『気の経営塾』が対象にしているのは、主に小さな会社や個人事業者、フリーランスなどである。これらの業種は、カテゴリー的に言えば従業員5人以下の小規模事業者ということになる。中小企業が50~300人に対して、小規模企業者は、製造業で20人以下、商業・サービス業で5人以下。つまり、ほとんど個人事業の延長や家族経営、かフリーエージェントが中心ということになる。

大企業と比べるべくもなく、圧倒的弱者となるのが小さな会社だ。だから、小さな会社の戦略は、大企業の戦略とは全く違うものになる。さらに言えば、中企業の戦略とも少し違うことになる。ここを勘違いしてしまう社長が多い。

誰もが、自分の会社を弱小だとは思いたくないし、堂々と大企業と戦っていきたいと考えている。しかし、それでは最初から負ける戦をすることになるのだ。

現代社会は、徹底的な資本主義社会だ。資本主義社会の特徴は、自由競争社会であるということである。しかし、この自由競争社会ということを簡単に考えてはいけない。

世の中のすべてのゲーム、すべてのスポーツは、参加者全員が、まず最初に対等の状態になることからスタートする。カードゲームでは同じ枚数が配られるし、駒は同じ数の駒が配られる。スポーツでも対戦人数は同じ数で始められる。カードは、一方が30枚でもう一方が5枚のような、圧倒的な不平等でのゲームはあり得ない。将棋でも、一方が飛車角1枚ずつで、一方が飛車角が5枚あるというのもあり得ない。サッカーでも、一方が5人で一方が20人ということもありえないだろう。

ゲームやスポーツでは、競争が成り立たせるために、両者の差をなるべく平等にするという配慮があり、さらにフェアプレイも要求される。しかし、現実の商売はそうではない。ゲームやスポーツとはまるっきり逆なのである。両者の差を同じにするという配慮はゼロである。しかも、フェアプレイも求められていない。その結果どうなるのかは誰でも想像がつくはずだ。

小さな会社は99.99%が敗者となる

商売には「平等なスタート」など用意されていない。ちっぽけな資本の個人が巨大な企業と戦わなければならない世界だということだ。時には、ちっぽけな存在がアイデアと思い切りの良さで勝ち上がるという話は爽快ではあるが、通常は巨大な権力や巨大な資本を持った存在は勝ちやすく、小さな資本は圧倒的に負けやすいのは誰が考えてもわかるはずだ。

そして、競争相手となる企業というのは往々にして超巨大資本になる。超巨大資本と個人が戦った場合99.99%は、超巨大資本が個人に勝つことになる。

業種によってライバルになる大手企業は違ってくるが、日本においてさえ、仮に情報産業で戦おうと思ったらソフトバンクという売上6.1兆円の企業がライバルになるし、ファッション分野で戦おうと思ったらユニクロの親会社ファーストリテイリングという売上2兆円の企業がライバルになることになる。

小さな会社は、なんとか巨大資本が進出しないニッチを必死で見つけて、そこで勝負するしかないのだが、そのニッチが広がって大きな分野になれば、大手がそれを買収するか競争を仕掛けて市場を奪い取ってしまう。さらに、社会のグローバル化が進んで行けば、競争相手としてさらに巨大なアップルやマイクロソフトという超巨大多国籍企業とも戦わなければならない。

こうした、最初から「競争」にもならないような「競争という名の収奪」が繰り広げられているのが、私たちが今いる資本主義社会の経営環境であり、圧倒的強者が常に勝利していく社会なのである。

だから、あなたの会社が、小さな会社であるのなら、ビジネスのやり方を間違えてはいけない。たいていの場合、大手や中堅企業の真似をしてしまうと、確実に負ける戦いとなる。

大企業が正攻法で行くのであれば、小さな会社やお店の取るべき戦略はゲリラ戦をするしかないのだ。ゲリラ戦と言ってもわかりにくいので、言い換えると、徹底的な顧客密着こそが重要なキーとなる。

こうした小さな会社の経営において、取り入れてほしいのは、『スモールビジネス戦略』だが、この戦略の中に、無理な拡大を目指さない(価格競争をしない)というものがある。そもそも、小さな会社においては、どうしても対応できる市場が小さいという問題がある。そして市場が小さいと当然売り上げも少なくなってしまう。それなのに拡大するなと言われると、なかなか納得しがたいものがある。

はたして、それでビジネスが上手くいくのだろうか?
そう考えてしまうのだ。

こうして、ついよく目にする大企業と同じような戦略を取り、敗者への道を転がり落ちていくことになる。

隙間で目立たずにそこそこ稼ぐ

もちろん、起業する時には誰でも、会社を成長させたいと考えて始める。しかし、現実には、うまく行けば、より強い競争相手が出現しどこかで必ず負けることになるし、うまくいかなければ、やはり失敗することになる。

小さな会社の行末は、結局この二つしか無いのである。結局のところ、小さな会社は、ニッチの小さな隙間で目立たないように、そこそこ稼ぐしか無いというのが、この世界の真実である。

さて、こうした小さな会社の社長の多くは、経営についての知識をあまり持たずに事業を始めてしまっている。とりあえず、○○をやりたいからという理由で、いきなりビジネスを始めている場合がとても多いのだ。

では、どうやって経営をしているかというと、これは、直感でやっていたりするわけである。なんとなく思い付きで施策を打ち、たまたまうまくいけば会社が成長する。こんな経営を行っている社長がとても多い。

もちろん、勘というのも、社長としての重要な資質の一つではある。しかし、その勘を支える論理的な思考は必ず必要になる。経営を論理的に考えた上で、その問題の解決策を考え出し、最後に勘を働かせて決断をする。つまり、勘を働かすためには、その判断の基になる経営理論やマーケティング知識が重要になるのである。

そしてこの社長の勘が最大限に発揮されるのが小規模事業者、つまり、小さな会社だ。『気の経営塾』においては、この勘を働かせるために必要な経営の基本ルールや、戦略、そして、マーケティング知識を体系的に学んでいただく。

これが「地理」の分野である。

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