「地理」とは、地の理(ことわり)意味している。私たちが学校で習う地理よりも、もっと広い概念だ。もちろん、その中には、立地戦略のような、地理的イメージのものも含まれるが、地とは現実世界のことであり、現実社会での経営のために必要な理論などを意味している。(内田游雲)
小さな会社が置かれる立場
「気の経営」が対象にしているのは、主に小さな会社や個人事業者、フリーランスなどである。これらの業種は、カテゴリー的に言えば従業員5人以下の小規模事業者ということになる。中小企業が50~300人に対して、小規模企業者は、製造業で20人以下、商業・サービス業で5人以下。つまり、ほとんど個人事業の延長や家族経営、かフリーエージェントが中心ということになる。
大企業と比べるべくもなく、圧倒的弱者となるのが小さな会社だ。だから、小さな会社の戦略は、大企業の戦略とは全く違うものになる。さらに言えば、中企業の戦略とも少し違うことになる。ここを勘違いしてしまう経営者が多い。
誰もが、自分の会社を弱小だとは思いたくないし、堂々と大企業と戦っていきたいと考えている。しかし、それでは最初から負ける戦をすることになるのだ。
小さな会社は99%が敗ける
ビジネスには「平等なスタート」など用意されていない。ちっぽけな資本の個人が巨大な企業と戦わなければならない世界だということだ。
時には、ちっぽけな存在がアイデアと思い切りの良さで勝ち上がるという話は爽快ではあるが、通常は巨大な権力や巨大な資本を持った存在は勝ちやすく、小さな資本は圧倒的に負けやすいのは誰が考えてもわかるはずだ。
そして、競争相手となる企業というのは往々にして超巨大資本になる。超巨大資本と個人が戦った場合99.99%は、超巨大資本が個人に勝つことになる。何の不思議もない当たり前の話である。
業種によってライバルになる大手企業は違ってくるが、日本においてさえ、仮に情報産業で戦おうと思ったらソフトバンクという売上6.1兆円の企業がライバルになるし、ファッション分野で戦おうと思ったらユニクロの親会社ファーストリテイリングという売上2兆円の企業がライバルになることになる。
小さな会社は、なんとか巨大資本が進出しないニッチを必死で見つけて、そこで勝負するしかないのだが、そのニッチが広がって大きな分野になれば、大手がそれを買収するか競争を仕掛けて市場を奪い取ってしまう。
これを昨今の企業買収のニュースを見れば解るだろう。
さらに、社会のグローバル化が進んで行けば、競争相手としてさらに巨大なアップルやマイクロソフトという超巨大多国籍企業とも戦わなければならない。
こうした、最初から「競争」にもならないような「競争という名の略奪」が繰り広げられているのが、私たちが今いる資本主義社会の経営環境であり、圧倒的強者が常に勝利していく社会なのである。
だから、あなたの会社が、小さな会社であるのなら、ビジネスのやり方を間違えてはいけない。たいていの場合、大手や中堅企業の真似をしてしまうと、確実に負ける戦いとなる。
大企業が正攻法で行くのであれば、小さな会社の取るべき戦略はゲリラ戦をするしかないのだ。ゲリラ戦と言ってもわかりにくいので、言い換えると、徹底的な顧客密着こそが重要なキーとなる。
こうした小さな会社の経営において、取り入れてほしいのは、『スモールビジネス戦略』である。
この戦略の中に、無理な拡大を目指さない(価格競争をしない)というものがある。そもそも、小さな会社においては、どうしても対応できる市場が小さいという問題がある。そして市場が小さいと当然売り上げも少なくなってしまう。それなのに拡大するなと言われると、なかなか納得しがたいものがある。
はたして、それでビジネスが上手くいくのだろうか?
そう考えてしまうのだ。
こうして、ついよく目にする大企業と同じような戦略を取り、敗者への道を転がり落ちていくことになる。
隙間で目立たぬように稼ぐ
もちろん、誰でも会社をどこまでも成長させたいと考えている。しかし、現実には、うまく行けば、より強い競争相手が出現しどこかで必ず負けることになるし、うまくいかなければ、やはり失敗することになる。
小さな会社の行末は、結局この二つしか無いのである。
結局のところ、小さな会社が生き残るためには、ニッチの小さな隙間で目立たないように、そこそこ稼ぐしか無いというのが、この世界の現実である。
さて、こうした小さな会社の経営者の多くが、経営についての知識をあまり持たずに事業を始めてしまっている。とりあえず、○○をやりたいからという理由で、いきなりビジネスを始めている場合がとても多いのだ。
では、どうやって経営をしているかというと、これは、直感でやっていたりするわけである。なんとなく思い付きで施策を打ち、たまたまうまくいけば会社が成長する。こんな経営を行っている経営者がとても多い。
もちろん、勘というのも、経営者としての重要な資質の一つではある。しかし、その勘を支える論理的な思考は必ず必要になる。経営を論理的に考えた上で、その問題の解決策を考え出し、最後に勘を働かせて決断をする。つまり、勘を働かすためには、その判断の基になる経営理論やマーケティング知識が重要になるのである。
そしてこの経営者の勘が最大限に発揮されるのが小規模事業者、つまり、小さな会社だ。私(内田游雲)が提供するコンサルティングにおいては、この勘を働かせるために必要な経営の基本ルールや、戦略、そして、マーケティング知識を体系的にお伝えする。
特に、『スモールビジネス戦略』は小さな会社のために考案した、負けないための戦略となる。まずはこれを身につけることろから始めることだ。
これが「地理」の分野である。