
50歳以上のスモールビジネス経営者にとって、老後の現実は他人事ではない。年金が不安定な今、月28万円の生活費を20〜30年確保するには数千万円が必要になる。お金は人生の選択肢を広げ、9割の問題を解決できる現実的な力だ。体力・気力がピークの今こそ行動すべき時であり、仕事を道楽化しながら資産を築く視点が求められる。マザーテレサでさえ巨額の資金を必要とした。お金と賢くつきあう現実主義が、豊かな人生の土台となる。(内田游雲)
内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者(特にスモールビジネス)に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
お金がすべてではない、という言葉を聞くと妙に安心してしまう人がいる。だが、「お金が大事じゃない」と本気で思い込んでしまうと、意外な落とし穴にはまることが多い。なぜなら、現実として「お金が無ければ不幸になる」ケースが山ほどあるからだ。たとえば、病気になったとき、子どもの学費が必要になったとき、あるいはスモールビジネスが突如ピンチを迎えたときなど、肝心のところで経済的余力がないと行動の選択肢が極端に狭くなる。問題の9割が「お金があれば解決できる」という主張は、やや大げさに聞こえるかもしれないが、実際には多くの人が痛感しているはずだ。
お金を軽視することの危うさ
実は、お金に対する苦手意識や「お金なんて汚い」というアレルギーが、経営者としての可能性を閉ざすことも少なくない。ビジネス拡大を志向しなくても、自分の強み(USP)を活かして道楽のように仕事を楽しむにしても、最低限の経済的安定は欠かせない。とくに50歳以上のスモールビジネス経営者なら、人生100年時を見据えたときに、なおさらお金の現実と向き合う必要がある。お金を軽視してしまうと、年齢を重ねるほど取り返しがきかなくなるからだ。
「お金は人生の質を大きく左右する」。これは誰も否定できない事実だ。目を背けたい気持ちはわかるが、避けても現実は変わらない。お金を見つめ直すことは、自分の人生全体を俯瞰する第一歩になる。そして現実主義の立場から言えば、お金が足りない人生は悩みも増える。せっかく積み重ねてきた経験や人脈を活かして、より自由なライフスタイルを築ける可能性があるのに、それをお金嫌いのせいで放棄するのはもったいない。「お金に振り回されるくらいなら、お金と仲良くしたほうがマシ」というわけだ。
周囲が狙うあなたの財布の中身
お金から目を背けていても、あなたの周囲はあなたの「お金」に高い関心を寄せている。これは誇張でも何でもなく、「あなたが生活する上で必要なスーパーやコンビニ、銀行をはじめとして、あなたの周囲のほとんどは、あなたのお金に高い関心を持っていることは事実」だからだ。つまり、こちらが無防備なままだと、気づかないうちに不利な条件を押しつけられたり、想定外の出費を強いられたりするリスクが高まる。
ビジネスを営む上でも同じだ。お金を敬遠してしまうと、取引先や顧客との契約条件をうまく調整できず、収益をしっかり確保できない場合がある。

「売上より資産を増やす」という発想を持つことは、現実主義として大切だが、そもそもお金への意識が低いと、その土台作りすらままならない。
さらに、「あの、マザーテレサの集金力は有名だった。マザーテレサが亡くなった時、彼女の預金口座には、5000万ドル以上の大金が入っていたと言われている。」というエピソードは象徴的だ。社会貢献に徹した人物でさえ、活動を広げるためには資金が欠かせなかった。この事実は、お金が悪ではなく、むしろ目的を達成するうえで必要な力になり得ることを示している。お金を嫌悪するのではなく、上手につきあう姿勢が求められる所以だ。
人生を俯瞰し老後を見据える
人生100年時代と言われるように、今後は多くの人が60歳や65歳を過ぎても長い時間を過ごす時代になりつつある。だが、老後を迎えるまでに「年金がどれほど当てになるのか」は未知数だ。政府が現行制度を維持し続けられる保証はなく、実際に「年金がない」可能性を懸念する人も増えている。
たとえ年金が受給できても、老後に必要とされる生活費は月28万円ほどだといわれる。これは別段贅沢をしているわけではなく、普通に暮らしていくための目安の数値に過ぎない。つまり、年間336万円程度の支出をどうまかなうかが、定年後の大きな課題になる。20年なら6720万円、30年なら1億円以上が必要になる計算だが、ここに年金が一部加算されたとしても、万全とはいえないだろう。
こうした老後のリアルを頭に置くと、「同じ毎日を繰り返していたら未来も同じ」という言葉の重みが増す。ある日突然、どこかから大金が舞い込む可能性はほぼゼロだ。だからこそ、今の暮らしをただ継続するだけではなく、長期目線で人生を経営する姿勢が大切になる。今のうちに老後を見据えた仕事設計をしておくことが、50代のスモールビジネス経営者にとって最も現実的な備えになる。
実際に必要な資金と年金の額
老後と聞くと「まだ先の話だし、なんとかなるだろう」と思いがちだが、多くの人がぎりぎりまで何も対策をしないまま年齢を重ねる。その結果、蓋を開けてみると、必要な資金がまったく足りなかったという事態に直面しやすい。毎月20万円を20年間貯め続ければ、ようやく5000万円に届くというのがシンプルな試算だ。45歳から65歳までそうした貯金ができる人はどれほどいるだろうか。
年金に期待するにしても、今の制度が将来まで手厚く残るかは未知数だ。老後20年の生活費を単純に計算すれば何千万円にも達する。これは決して「ぜいたく三昧」の予算ではない。

むしろ最低限の安心を確保するための基礎体力のようなものだ。だからこそ、50代からでも遅くはない。計算の土台をつくり、無理なく資産を増やす方策を少しずつ模索することが肝心になる。
とはいえ、「貯金だけ」では間に合わない可能性もある。金利がほぼ期待できない時代に、ただお金を銀行に預けるだけでは増え方が限られるからだ。スモールビジネスを営む強みを活かして、ビジネスそのものを資産化するという発想があってもいい。自分の強みを発揮できるジャンルで、仕事を道楽のように楽しみながら少しずつ利益を確保する。その積み重ねが、老後の安心に直結する。
今こそ始める現実主義の生き方
現実主義というと、夢がないとか冷たいと敬遠する人がいる。しかし、あくまでも「世の中がそういった世界であることを冷徹に見つめつつ、その中で最大限のことをする」という姿勢こそ、50代以降の人生を豊かにするカギだといえる。
もし「労働+労働」で稼ぎ続けようとするならば、加齢による体力や気力の低下が大きな壁になる。残念ながら、人は年を取るほど若返らない。だからこそ、今が一番肉体的にも能力的にも調子がいいと開き直り、「今日から」できる対策に踏み出すことが重要になる。何も巨大な挑戦をする必要はない。スモールビジネスを軸に、現実と照らし合わせながら新たな収益の糸口を探るだけでも、未来は大きく変わる。
また、「老後を見据えて身動きが取れなくなる」という不安を抱く人は少なくない。実際、生活保護受給者やホームレスになってしまったら、大きな夢や理想を持っていても追いかけるのは至難の業だ。だからこそ、まずは現実主義の目線で老後の資金や年金を計算し、そのうえでスモールビジネスをどう展開するかを考える必要がある。多額の借金を背負うような拡大路線を歩まなくても、マイペースな経営で確実に利益を上げる道はいくらでもあるはずだ。
未来への備えは今が起点になる
老後、年金、そして人生100年時代などというキーワードを聞くと「先が長すぎて想像もつかない」と感じる人もいる。しかし、そんな漠然とした将来に対して、「今日できること」を積み重ねるのが何より大事になる。結局のところ、未来の自分を救えるのは今の自分の行動だけだ。
「あなたが生活する上で必要なスーパーやコンビニ、銀行をはじめとして、あなたの周囲のほとんどは、あなたの『金』に高い関心を持っていることは事実」。だからといって悲観する必要はない。むしろ、お金というリアルを直視し、そこから逃げずにどう活かすかを考えるのが賢い経営者の姿だ。経営者の人生の質を最優先に考えるなら、仕事を道楽化しつつも資産を増やすことを目指すのが得策だろう。ビジネスを軌道に乗せれば、その延長線上で顧客とともに成長できるし、長期目線で人生を経営することも実現しやすくなる。

やるべきことはシンプルだ。まずは老後に必要な資金を数字で把握する。つぎに、現実主義の観点で無理なく取り組める戦略を立てる。そして、明日ではなく今日から少しずつ実行に移す。大きな決断や激しいリスクテイクは必要ない。自分の強みを活かせる範囲で、「何か一つ新しい動き」をスタートしてみるだけでも、未来は確実に前向きに変わるはずだ。行動を続けていくうちに、気がつけば自分なりの天職が見つかり、豊かな老後を迎えるための土台ができあがっているかもしれない。
お金を避けるのではなく、お金と一緒に歩む。これが50代からの人生をより楽しく、より粋に過ごすための秘訣だ。賢く現実を見ながら、ポップでライトな気持ちを忘れずに今日も一歩を踏み出していけばいい。