小さな会社の経営者にとって重要なことは、ビジネスの目的が、人生の目的と合致しているかどうかである。中小企業の経営者の多くが、仕事に全ての時間を取られ、それ以外の部分にほとんど目を向けていない。これでは、どれだけ頑張っても後で後悔することになる、失った時間を取り戻すことはできないのだ。(内田游雲)
人生の目的と経営を合致する
小さな会社の経営者にとって、一番重要なことは、ビジネスの目的が、あなたの人生の目的とちゃんと合致しているかどうかである。
経営者にとっての人生の目的とは、言い換えれば「資本を使う理由」である。
ビジネス経営をすることで、何を実現していくかということだ。
特に小さな会社の経営者がビジネスを経営をするということは、自分の人生をそのビジネスに全て賭けるということだ。
だから、自分の人生をビジネスでどのように実現しているかという明確な目的が必要になる。
人生の目的は、通常は、自分の魂の奥深くに埋められているものだ。
これこそが、生きる目的であり、資本を使う理由となる。
この理由を明確にして、経営の方向性を合致させ、それに対して、資本をどのように使っていくかがビジネスの最も基本と言えることなのである。
QOLを経営の指標にする
QOL(Quality of Life)とは、「生活の質」や「人生の質」を意味する言葉で、私たちが生きる上での満足度をあらわす指標のひとつだ。
本人が幸福を感じられる生活を送っているかが重要で、医療や介護、教育などさまざまな分野で注目・活用されるようになってきている。
ところが、経営者のQOLは果たしてどうなのか?
こうした部分に触れられているものがほとんど無い。
そもそも、QOLとは、自分がどれだけ幸福を感じられるかであって客観的な指標があるものではないが、一般的に、以下の6つの分野に分けて考えれば理解しやすくなる。
(1)仕事(お金を稼ぐこと)
(2)経済状況
(3)健康
(4)精神性・感情
(5)人間関係・家族関係
(6)知識・教育
問題は、中小企業の経営者の多くが、仕事に全ての時間を取られ、それ以外の部分にほとんど目を向けていないということだ。これでは、どれだけ頑張っても、失った時間を取り戻すことはできない。
なぜ、そんな事が起きているかというと、そもそも、どこを目指しているのか、どのようなQOLを目指しているのかが明確ではないからだ。
無理して、意味のない拡大を目指すよりも、QOLを中心に考えた経営者の生き方があっていいはずだ。
金を多く稼ぐことよりも、もっと大事なことが人生にはある。
もちろん、経営者が金を稼ぐことから逃げてはいけないが、どこまでも金を稼げばいいものでもない。
それよりも、今、この時のQOLを大事にする経営が有ってもいい。
フロー状態の発言を目指す
人生の目的と経営の目的が一致すれば、ビジネスは自ずとフローに入ることになる
これまで、仕事をするということは、
「仕事はそんな甘いもんじゃない!」
「仕事だからタイヘンなのは当たり前!」
「仕事だから我慢しなければいけない!」
こうしたものだった。
しかし、それは本当だろうか?
私は、そうではないと考えている。
また、その反面、
「好きなことを仕事にできる人は幸せだ!」
こうした言葉も耳にする!
人生の中で仕事をしている時間は、一般的に1日8時間、つまり、人生の1/3にもなる。小さな会社の経営者の場合、大抵この時間は更に多い。起きているときのほとんどの時間を仕事に費やしているものだ。
これだけの時間を我慢と苦痛の中に置くことが、はたして本当に幸せなことなのだろうか?
本来全ての人間は幸福になるために生きている。だったら、自分のやりたいこと、得意なこと、そして人生の目的を仕事にできたら、その人の人生はより輝いていくはずである。
楽しいから仕事は上手くいく
情熱を感じることを仕事にして、自分の強みに特化したビジネスを実現することで、仕事自体が 楽しいものとして働くことができるようになる。
人間だれでも好きなことは時間を忘れてできるものだ。楽しいことだから元気になれる。楽しいからやる気が出る。
そして、アイディアも湧き出てくる。さらに、強みを活かして本来の輝きを解き放つことで、いわゆるフロー(流れの中に生きる)に移行する人も多くなっていく。
そもそも、なぜ私がこのフローについて 考え始めたかというと、私は、ここ数年運について考えていた。これは、よくいう占いの類ではなく、世の中には、いつも運のいい人、いつも運の悪い人がいる。こうした幸運・不運に差がつくのはなぜなのかだ。
どうすれば幸運になれるのか
そもそも「運がいい」とはどういうことなのかというと、運がいいとは、「物事が思うように運ぶこと」あるいは、すべての物事が都合のいいように働くということ」だ。これを、共時性(シンクロニシティ)の発動という。
それでは、この状態をどんな人でも作り出すことは、できるのだろうか?
これについては、過去にイギリスの大学が調査し、興味深い結果が出ていた。1ヶ月の間、幸運な人と同じような行動をしてもらい、自分の直感を大事にし、運があると期待をかけ、そして悪運には融通を持って対処するようにさせたのだ。
すると80%の人が自分の人生について幸福感を得て、幸運なように感じていたそうである。そんな幸運の要素と呼ばれる4つは、
1. 内から聞こえる直感を大事にする
2. 新しい経験をすることや普段の習慣が壊れることに対し心をオープンにする
3. 毎日少しの時間だけ、うまくいったことを考えるようにする
4. 重要な会議や電話などする前に、自分を幸運な人間だと心に描く
こうすることで、だれでも 幸運になることができるとしている。
ビジネスがフローにはいるとどうなるかというと、まず、すべての物事が思うように運ぶようになる。ワクワクし無我夢中で何かに取り組んでいる時の精神状態になり、共時性が発動されていく。
共時性とは、必要な人や物や出来事が勝手に押し寄せてくる状態だ。つまり、ひたすら運がよく、全てが思い道理に運んでいく状態である。
このフローは、すべての物事を成就させる力を秘めていて、何もかもがうまくいくようになる。つまり、このフローにさえ入れれば、何も考えなくても すべてがうまくいく幸運の状態になっていくのだ。
フローのコツ「内発的動機」
このフローに入るコツというものがある。それが、内発的動機に従うことだ。一般的に人間は、外から与えられる何らかの報酬を求めたり、処罰を避けるために 行動を選択すると考えられている。
金銭や名誉、地位、人気などを求めること、競争に勝つこと、他者との比較で優位に立つこと、また法律に違反しないようにとか、他人から後ろ指を刺されないようにと評判を気にした行動、食欲や性欲といったようなものだ。これらを外発的動機という。
これに対して、心の底からこみ上げてくる動機を内発的動機という。つまり、ほんとうの喜びや楽しみは、外部から与えられる一切の報酬とは無関係に、心の底からこみ上げてくるものである。
ところが、今の社会では、勉強していい大学に入り、いい企業に就職して出世することや、起業したり、あるいはしこたま金が稼げる仕事に就いたりすることが、幼少の時からの人生の目標のようになってしまっている。
つまり「勝ち組」になり、社会の上層部に属することが、憧れであり、絶対的に善だと思われている。
フローに入る鍵は小さな会社
さて、ここで小さな会社が取るべき戦略に話を戻してみたい。
そもそも、小さな会社がとるべき方向性は、「自分の好きなことから創造する商売」だ。「好きなこと」だから、時間を忘れて没頭できるし、「やりがいを感じている」から楽しく生き生きと仕事ができるビジネスである。
これは、仕事がフローに入る条件と同じである。それはつまり、運がよくなる条件ということでもある。
しかし、人間でも組織でも、合理性からはみ出した部分は、合理的な部分に比べて、はるかに大きく、はるかに大切で、はるかに本質的なもので、そもそも、人間も組織も合理的な存在ではないのだ。むしろ、合理的を超えたところにこそ正解があるものである。
経営者の成長でフローに入る
基本的に経営者の自我が成長して軽くなると、ビジネスにフロー状態をもたらしていく。
つまり、経営者の人間的成長なくしては、ビジネスがフロー状態に入ることは難しく、特に中小企業や個人事業のような小さな会社においては、社長の人間性が最も大きくビジネスの成果に直結している。古くからいわれてきたことではあるのだが、経営者の人間性こそが、そのビジネスの成否を決める最も重要な部分なのだ。
しかし今度は、フロー状態になり無敵に感じられるようになると問題が発生する。それは「自我の肥大」である。自我の肥大というのは、自分の存在や影響力、能力などを過大評価することだ。こうしてせっかくフローに入っても、人間は、その状態をなかなか長く続けられない。
ただここで気をつけなければいけないのが、状況が良くなるにつれて、これまでのやり方が顔を出してくる。そうすると自我が肥大化し、フロー状態から外れ元にもどってしまうのだ。
これを修正するために、私(内田游雲)が提供するコンサルティングでは、定期的に話をすることで、できるかぎりフロー状態を維持できるようにしている。
こうして、やりたい仕事だけを行い、あえて拡大を目指さず自由に仕事も遊びもできるようになると、人生をもっと楽しむことができるようになるだろう。