資本主義の世界では、まず金を稼ぎ、今度は金によって金を稼がせるという2つの段階が必要になる。この社会において、ビジネス経営の目的とは、金を稼ぐことであるが、それは言い換えれば、長期的に資産を最大化することにある。つまり経営者の資産をひたすら増やすことへと帰結するのだ。(内田游雲)
資本主義の法則「r>g」
「気の経営」において、具体的にどのようにビジネスを行い、どのように生きていくのがいいかというと、まずは、金を得やすい生き方をすることだ。
つまり、金銭力を上げる生き方である。
これは、経営だけではなく、普段の生活も含めてのことになる。
そのために、知っておかなければならない重要な法則がある。
それが、「r>g」である。
「r>g」は、フランスの経済学者トマ・ピケティが、世界各国の200年以上にわたる税務局の統計データを調べて発見した法則で、著書『21世紀の資本』で提唱したものである。
仕事における収入は長い年月で平均すると年2%の増加で経済成長率と均衡する。フランスの経済学者トーマス・ピケティはこれを「g」と言ったが、これは経済成長率(エコノミック・グロース・レート)の「グロース」から取ったものである。一方で、株式を含む資本の収益率(リターン・オン・キャピタル)をトーマス・ピケティは「r」と言った。
そして、資本主義社会を「r>g」と表現したのだ。
彼は、資本収益率(r)は長期的に見て経済成長率(g)を上回り続ける傾向があると指摘している。つまり、r>gとは、資本の平均年間収益率(r)が経済成長率(g)よりも大きいという不等式である。
仕事をして得る収入だけで生きている人間を毎年2%の成長、そして資産を持っている人の資産の成長を仮に7%として、40年の年月を見れば、もはやそれは埋めがたいものになっているというのは、誰であれ容易に想像できるはずだ。
これが、資本主義社会の底に流れている巨大な潮流である。
行動によって格差が生まれる
格差がとめどなく広がる理由は、この資本主義の中で「g(仕事による収入)」の成長だけで生きるか「r(資産)」の成長で生きるかの差となって現れている。
その結果として、わたしたちの住むこの社会においては、資本家(株や不動産、債券などへの投資による資本収益を得る人)は、経営者(会社を経営して所得を得る人)や、労働者(労働による所得を得る人)よりも富を増やしやすいということだ。
つまり、
労働収入 < 経営収入 < 投資収入
こうした順になっているということだ。
世の中で一番金を稼ぎやすいのが、資本家であり、次に経営者、最後に労働者の順となる。
「r>g」が成り立つと、資産によって得られる富は労働によって得られる富よりも成長が早くなり、裕福な人はさらに裕福になりやすく、貧しい人はさらに貧しくなりやすくなる。だから、この公式に合わせて生きていくことが重要となる。そして、少しでも早くこのことを理解するほど、金持ちになりやすい。
このことこそが、資本主義社会におけるマネーリテラシーの基本である。
しかし、この重要性についてほとんど触れられることはない。なぜなら、これを知られることは、社会が崩壊する可能性が高くなることを意味するからだ。社会のすべての人が、働かないで投資で食っていたら社会は成り立たない。
仕事の意義や、働くことを推奨する社会では、この真実はできる限り隠し通したいことだからである。だから、一生懸命汗水流して働くことは尊いのだと、社会は促している。
こうした世の中の嘘に早く気づくことだ。
資本主義で生きる2つの段階
ここに思い当たれば、資本主義の世界では、まず金を稼ぎ、今度は金によって金を稼がせるという2つの段階が必要になることが理解できる。
つまり、まず必死で金を稼ぎ、貯金し、次に資産を構築し金に金を稼がすことである。
この2つを順番に行うことで、資本主義社会の荒波を乗り越えていくことができる。
更に突っ込んで考えてみれば、この世界の経済の仕組みは、2つに分かれていることに気づく。
一つが私たちがイメージしている経済である。
これを実体経済という。
つまり私たちが生産や消費活動をしている経済である。
通常GDPとして計算される経済である。
しかし、経済はそれだけではない。
もう一つ私たちが意識していない経済がある。
それが金融経済だ。
株や債券などの金で金を稼ぐ経済である。
この金融経済は、付加価値を生みだすことはない。
だから、GDPにも含まれない。
そして、この2つの経済は、全く別のものである。
だから、私たちの意識に全く上らないのだ。
トマ・ピケティの書いた【r>g】のもう一つの意味がここにある。
つまりr(金融経済)>g(市場経済)ということだ。
平たく言うと、市場経済で活動するよりも金融経済で活動するほうが金が稼げるということである。
実のところ、最も大きな問題は「g(約2%成長)」から「r(約7%成長)」に来るのが這い上がる最も重要な仕組みであるにも関わらず、誰も「r」に行かないことだ。
資本主義社会で経営する秘訣
これは、経営者であっても同じである。
ビジネスをすることは、働くこと、すなわち「g」であると勘違いしている。
もちろん、最初のうちは全ての人が「g」からしかスタートできないが、どこかで「r」を取り入れることを考えない限り、いつまで経っても金を稼げない上に労働からも逃れられない。
このことは、秘密でも何でも無い。
そもそも資本主義という名称にそれが表されている。
資本主義の資本とは、「資産」を意味するからだ。
もちろん、ほとんどの人が、こうしたルールが存在することに、気づいていないということもある。
マネーリテラシーの教育を受けていなかったということもある。
また多くの人は世の中の仕組みなどに興味がないということもある。
そして多くの人が、短期志向でしか物事を考えないということもある。
こうした、様々な要因が重なって人々は何もしない。
こうして、格差は決して縮まることはなく、さらに拡大していく一方となる。
実際には、資本主義社会を這い上がる仕組みが用意されているにも関わらず、ほとんどの人はその仕組みを使うことがない。
いつまで経っても資本主義の恩恵を受けようとしないままだ。
ここで、最終結論を書いておくことにする。
この社会において、ビジネス経営の目的とは、金を稼ぐことであるが、それは言い換えれば、長期的に資産を最大化することにある。つまり経営者の資産をひたすら増やすことだ。
こうした意見に不快感を覚える人もいるだろう。
それはそれで構わない。
自分の思うように生きればいいだけだ。
しかし、世の中を俯瞰して現実的に考えれば、こうした結論にだどりつくしか無いのである。