QOL(Quality of Life)を指標にする

何十年も無駄な人生を送らないために

経営者は、まず自分の生活の質を第一に考えたほうがいい。会社のため、従業員のためと、自分以外を優先することは辞めるべきである。会社を大きくする必要もない。無理して、意味のない拡大を目指すよりも、QOL(Quality of Life)を中心に考えた経営者の生き方があっていいはずだ。(内田游雲)

小さな会社の新しい経営指標

QOL(Quality of Life)とは「生活の質」や「人生の質」を意味する言葉で、私たちが生きる上での満足度をあらわす指標のひとつだ。このQOL(Quality of Life)は、本人が幸福を感じられる生活を送っているかが重要で、医療や介護、教育などさまざまな分野で近年、注目・活用されるようになってきている。

ところが、中小企業経営者のQOLは果たしてどうなのか?
こうした部分に触れられているものがほとんど無い。

そもそも、QOLとは、自分がどれだけ幸福を感じられるかであって客観的な指標があるものではないが、一般的に、以下の6つの分野に分けて考えれば理解しやすくなる。

(1)仕事(金を稼ぐこと)
(2)経済状況
(3)健康
(4)精神性・感情
(5)人間関係・家族関係
(6)知識・教育

失った時間は何をしても取り戻せない

問題は、中小企業の経営者ほど、仕事に全ての時間を取られ、それ以外の5つの部分にほとんど目を向けていないということだ。
こうして失った時間は、何をしても取り戻すことはできない。

なぜ、そんな事が起きているかというと、そもそも、どこを目指しているのか、どのようなQOLを目指しているのかが明確ではないからだ。

そう考えるに至れば、経営者は、まず自分の生活の質を第一に考えたほうがいい。会社のため、従業員のためと、自分以外を優先することは辞めるべきである。会社を大きくする必要もない。
自分の見栄を捨てれば、それほど無理しなくてもそこそこ豊かになれることに気づくものだ。

自分より従業員を優先した結果

私が、不動産会社をやってたとき、自分のお金は、いつも後回しだった。いい人になろうとして、とにかく社員への支払いを怠らないようにしていた。

そして、月末に残った僅かな額を自分に支払っていた。だから、時には、給料など無い時もあった。金銭的に苦労し、長時間、一生懸命働いていたにもかかわらず、私の収支は、いつもぎりぎりセーフという感じが続いていた。

ところが、そうやって頑張って給料を支払ってきた社員たちは、わずか6ヶ月とか1年ほどで辞めていく。どういう訳か、私は、そんな社員たちが、自分よりも重要だと考えていた。
これは、せっかく自分に向かってきた金の流れをわざわざ他へ向けてしまう行為である。そうしてしまうと、自分に向かってくる金の流れが、他へ向くことになってしまうのだ。その結果として、金の流れが減っていき、苦しくなってしまう。

私のビジネスの中で、最も重要で欠くことのできない存在は私自身だということだ。何があろうと、最後までこのビジネスに留まるのは、自分であり、一番働いているのは社長である私だということである。

これは思い当たる人も多いだろう。

そもそも、私がいなければ、ビジネスそのものがは無くなってしまう。こう、気づいた瞬間から、私は発想を転換した。自分自身の働きに対して、確実に金銭的な見返りを得られるようにする為、まず最初に自分に支払い始めたのだ。その時から、不思議なことに金がしっかりと回るようになった。

多くの小さな会社の経営者が私と同じ間違いをしている。社員の給料を何より優先して払おうとしている。これは、間違いだ。まず、自分がしっかりと取ることだ。金をしっかりと確保して自分自身に投資することだ。

まず最初に自分が取って、勉強やスキルを身に付けることに使う。そうすることで、初めてビジネスが回っていく。経営者が社員の給料を優先している限り、新しい知識やスキルを身に付けられずに会社は衰退していくしかない。

そもそも、大企業を見てみればいい。彼らは、たとえ会社が倒産しそうになったとしても、何十億円もの報酬を平気で受け取っている。これが、資本主義社会における会社の常識である。ところが、中小企業などの小さい会社ほど社員の給料を優先する。だから、苦しくなるのだ。

小さな会社の経営者ほど、自分の価値に見合う金額を最初に受け取るべきである。会社においては、経営者が絶対的な1番である。中小企業の経営者は、このことをぜひ肝に銘じておいて欲しい。

あなたはどんな人生を送りたいか

特に中小企業の経営は、経営者の人生に大きく重なる。だからこそ、経営をする前提として、自分がどのような人生を送リたいのかを、もっと重視するべきなのだ。

ビジネス経営において一番最初に考えるべきことは、あなたの望む人生をビジネスという枠を使ってどう実現していくかということである

しかしほとんどの経営者が、ここを疎かにしている。その結果、忙しいばかりで、たとえビジネスが上手くいっても、こんなはずではなかったという人生を送るはめになっている。

もちろん、あなたが、どのような人生を望むかによって、仕事の内容も、ビジネスのジャンルも変わっていく。だからまず、自分はどんな人生を送りたいかをまず考え、それに合ったビジネスを経営するここそが、自分の人生を構築していくことが、小さな会社の経営の姿だ。

あなたの会社は大きくできるのか

たいていの経営者は、会社や事業を大きくすることが素晴らしいことだと洗脳されている。
これは、子供時代から競争に勝つことが素晴らしいという価値観によるものだし、社会全体がそうした価値観に染まりきっている。

だから、ビジネスを始めると、とにかく大きくすることに目的が行ってしまうことになる。その結果として、競争に巻き込まれてしまい、苦しい戦いを強いられ、心身をすり減らして、気がついたら何十年も無駄な人生を送ってきたことに気付くことになる。
私自身、そうした人生を過ごしてしまったことを後悔しているし、残念に思っている。

何十年も無駄な人生を送ったことに気付く

あなたは、ビジネスを始めて大きくなる可能性は、どれくらいなのか理解しているだろうか?
中小企業庁の統計によれば、日本の企業の中小企業の割合は99.7%に登る。
つまり大企業は0.3%だ。そして中企業は、1割未満、残った9割が小企業となる。
ここから、単純に計算するならば、起業しても大企業になれるのは0.3%にすぎない。

ただし、これが現存する法人数から計算した割合であり、これまでに消えていった数しれない会社はカウントされていない。つまり実際に大企業になれるのは、もっと限りなく少ない割合だということだ。しかも、中規模になれる可能性すら10%未満である。
そして、ここには個人事象は含まれていない。そうなると、更に割合が少なくなることになる。おそらくその確率は宝くじの一等を当てるのと大差無いくらいだろう。

商売は成功しにくく失敗しやすい

「商売は成功しにくく失敗しやすい」
じつは、ほとんどの起業家がこのことに気づいていないか、見ないようにしている。

起業するときには、
「よし、頑張って上場するぞと」
心の底で、意気込んでいたりする。

「千三つ」という言葉を知っているだろうか?
「千三つ」とは千のうち三つしか本当のことじゃないというこで、ほとんどありえないことから転じて、ほら吹き、うそつき、の意味だ。

「千三つ」とは0.3%のことだ
だから、ビジネスを大きく育てるということは 「千三つ」だということだ。
つまりほとんどが失敗する。

ビジネスが大きく成長するのは奇跡的確率

ビジネスを大きく成長させるには、とてつもない努力と幸運が必要になる。もちろん可能性はゼロではない。しかしそれは奇跡と呼ぶくらいの確率だと言っていい。
そうなると、ビジネスを拡大することは、リスクにしかならない。なぜなら拡大すれば、自ずと競争に巻き込まれることになるからだ。そして、強者はできるだけ競争することを好む。

競争が成り立つのはそれぞれの個体の力が拮抗しているときだけである。誰かが一方的に勝ち始めて無敵化すると、競争は完全に成り立たなくなっていく。勝者がすべての競争に勝つからだ。そして、敗者がまったく何も持たなくなるまでそれが続く。

圧倒的強者であればあるほど、競争が好きなのは、こうした理由が裏側にある。必ず勝てる戦いを仕掛けるのは他人が持っているものをすべて奪い取るためだ。
圧倒的な強者になれないのであれば、拡大することはリスクにしかならないということが統計上からも見えてくるのだ。

QOLを経営の中心にする

そう考えれば、無理して、意味のない拡大を目指すよりも、QOLを中心に考えた経営者の生き方があっていいはずだ。
金を多く稼ぐことよりも、もっと大事なことが人生にはある。
もちろん、経営者が金を稼ぐことから逃げてはいけないが、どこまでも金を稼げばいいものでもない。
それよりも、やりがいのある仕事をして、自由にそこそこの金を稼ぐほうが幸せではないだろうか?
今、この時を大事にするQOLの経営があってもいい。

内田游雲
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