
AIやロボットが台頭する時代に備え、小さな会社は時間労働に頼らない「継続型の収入」を構築する必要が高まっている。キャピタルゲインだけでなく、インカムゲインや再投資を通じて価値を継続的に提供し、一度作った仕組みから安定収入を得ることが重要だ。時間と収入を切り離し、サブスクやオンライン講座など複数の収入源を持つことでリスクを分散し、長期的な経営の安定を図れる。こうした継続型の収入があれば、一時的な景気変動にも柔軟に対応できる。(内田遊雲)
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内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
日本の経済や雇用状況が大きく揺れ動いている今、企業の大小を問わず「これまでと同じやり方だけでは厳しい」と感じる経営者が増えている。
とりわけ、小さな会社の経営者にとっては、安定したビジネスモデルを作ることがますます重要になってきた。そこで注目されるのが「継続型の収入」である。
継続型の収入が必要な時代
これまでは、どれだけ多くの時間を働き、どれだけ効率を上げて作業できるかが収入アップのカギだった。しかし、ロボットやAIによって置き換えられる業務が増える昨今、「時間の切り売り」だけで勝負できる時代ではなくなりつつある。
つまり、雇用が先細るリスクが高まる中、経営者自身も「複数の収入の流れ」を作っておくことが必須だというわけだ。
継続型の収入を意識して会社を運営すると、短期的には目立たないかもしれないが、長期的には圧倒的な安定感を得られる。
まさに「使って減らぬ金百両」を得ることにもつながるだろう。
時間と収入を切り離す重要性
世の中にはいろいろな働き方があるが、「収入を増やしたい」と考えたとき、多くの人がイメージするのは自分の時間をさらに仕事に注ぎ込むことだ。
たとえば、本業が終わった後に副業のアルバイトをする、休みの日を返上して単発の仕事を受けるなど、いわゆる“時間の切り売り”で稼ぐ方法である。
もちろん、それも一時的には有効かもしれない。
手っ取り早く現金収入を得られるし、即効性もある。
しかし、その代償は大きい。
まず、誰しもが平等に持っている最も大切な資源「時間」は、決して増やせない。
いくら働いても1日は24時間しかない。
無理やり労働を増やせば、健康を損ねたり、家族や友人との時間を失うことになったり、心の余裕まで削り取ってしまう危険がある。
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さらに、今後はAIやロボットによって代替される仕事が加速度的に増えていく。
つまり、昔ながらの肉体労働や単純作業に依存していては、ビジネスも個人の収入も安定しない。
そうした不安定な状態から脱するためにも、「時間を切り売りしない収入の流れ」を作ることが、経営者にとって大きな課題になる。
時間と収入を切り離すには、「ある価値を一度提供したら、そこから継続的に収入が生まれ続ける仕組み」を作り上げる必要がある。
これこそが、「継続型の収入」であり、後述するインカムゲインが重要なカギを握るのだ。
キャピタルゲインとインカムゲイン
資本主義社会には、誰にでも等しく備わっている「お金を生み出す仕組み」が三つある。それが以下の三つだ。
1. キャピタルゲイン
2. インカムゲイン
3. 複利(再投資)
まず「キャピタルゲイン」とは、資産価値が上昇することで得られる利益を指す。
たとえば、不動産や株式を安く買って、高値で売る。ビジネスでいえば、1,000円で仕入れた商品を2,000円で売るといった、いわゆる“差額”がキャピタルゲインだ。
これは「付加価値をつけて売る」という行為にも通じる。多くの小さな会社では、まずここからスタートすることが多い。
次に「インカムゲイン」だが、これは資産が継続的に生み出す配当や利息のこと。
具体例としては、家賃収入や特許使用料、アフィリエイト収入などが挙げられる。小さな会社の例でいえば、自社の独自コンテンツを有料で公開し続けて継続課金する仕組みもインカムゲインに当たる。
ネットを活用すれば大きな初期投資なしで始められるケースも多く、うまく回せば「ほったらかしでも収入が入り続ける」状態に近づくことができる。
そして三つ目が「複利」だ。
増えた利益を再投資してさらに収益を拡大する。ビジネスでは、事業の利益を新しいプロジェクトや設備投資に回して、さらに大きな利益を狙うという流れになる。
この中で「継続型の収入」を得るために最も重要となるのは、やはり「インカムゲイン」である。
通常の労働は、働いた時間分の対価として一度切りのキャピタルゲインしか得られないが、インカムゲインは労働から切り離され、継続的にお金をもたらしてくれる。
継続型の収入を得るための方法
継続型の収入を得たいなら、まずは「何を継続的に提供するか」を考える必要がある。小さな会社が取り組みやすい具体例を、いくつか挙げてみる。
・サブスクリプションモデルを導入する
ソフトウェアやオンラインサービスだけでなく、最近は食品や日用品でもサブスクの形態が増えている。定期的に商品やサービスを届けることで、継続的な収益を得られる仕組みを作る。例えば、新鮮な地元野菜の定期便サービスなどは、地方の小さな生産者や販売店が取り組みやすいサブスクモデルだ。
・オンライン講座やコミュニティの運営
自社のノウハウや技術をオンライン講座の形で提供し、受講料を継続的に受け取る。あるいは会員制コミュニティを運営し、月々のメンバーシップ費を収益源にする。この場合、最初はコンテンツ作りに時間がかかるが、一度整備すると軌道に乗ってからは「寝ていても」受講料が入り続ける可能性がある。
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・知的財産の活用
特許や商標、著作権を取得し、ライセンス料を得る。小さな会社でも、自社が得意とする商品や技術に独自性を持たせ、ライセンスアウトする仕組みを作れば、インカムゲインとして長期的に安定収入を狙える。
・不動産の活用
もし会社名義で物件やスペースを所有しているならば、その一部をレンタルスペースとして貸し出すのも一案。オフィスの空きスペースをスタートアップやフリーランスに貸すコワーキングモデルなども、固定的な収益源になる。
いずれにしても、“自分の労働時間”とは別に、価値を提供し続ける仕組みをどう構築するかがカギになる。
最初は手探りでも、継続型の収入を増やすアイデアを複数持っておくことが、今後の時代には非常に重要だ。
価値提供が継続型収入の要になる
継続型の収入を生み出すには、提供する「価値」そのものが、時間や場所の制約を受けにくいかどうかが大事になる。
具体的には「あなたが提供したいものは、受け取る側にとって何らかのメリット、楽しさ、便利さ、あるいは感動をもたらすか」という問いを常に持ち続ける。
単に「これを売りたい」「あれを提供したい」という発想にとどまらず、「相手の時間をどれだけ有意義にできるか」「相手の作業をどれだけ効率化できるか」「相手をどれだけ笑顔にできるか」を掘り下げて考えるのだ。
価値の源泉が明確になれば、それを持続的に享受してもらうための仕組みづくりが見えてくる。
たとえば、情報発信型のビジネスであれば、「定期的に更新されるからこそ魅力が増す」という観点でサブスクや会員制に誘導できる。
あるいは、商品販売であっても、補充が必要な消耗品なら「定期便モデル」を作るのが自然な流れだろう。
さらに、継続型収入の仕組みができれば、そこで得た利益を再投資して自社のサービスを強化したり、新たな商品の開発にチャレンジしたりできる。
こうしたサイクルが回り始めれば、会社の土台がぐんと強くなり、短期間での売上増を追いかけるだけの不安定な経営から脱却できるはずだ。
小さな会社こそ継続型収入を積み上げる
継続型の収入を得るには、構築に時間がかかるというデメリットがある。一気に大金を稼ぐ投機的な話とは違い、地道な仕組みづくりが必要になる。最初はなかなか売上が伸びなくても、根気よく種をまき続けることが大切だ。
だが、小さな会社にとって、長期的に安定した収益をもたらす源泉を持つことは大きな強みになる。
たとえば、社長一人しかいないような規模の会社でも、サブスクリプションモデルのサービスやオンライン講座を開発してしまえば、毎月一定の売上が見込めるようになる。
そこにアルバイトやスタッフを加えて新たな事業を生み出す余裕が出てくれば、社内で新プロジェクトに取り組む時間も生まれ、さらに新しい継続型の収入を作ることが可能になる。

また、継続型の収入を複数持つことで、経営のリスクヘッジにもなる。
特定のクライアントや取引先に依存しすぎると、不測の事態が起きたときに一気に会社が立ち行かなくなるリスクがある。
しかし、複数の収入源があれば、一部が不調でも他で補える。結果として、経営が安定し、会社の信用度も増す。信用度が上がると銀行の融資も受けやすくなり、さらなる事業展開もしやすくなる好循環が生まれる。
大切なのは、継続型の収入を“今から”意識して取り入れることだ。
すぐに大きな成果が出なくても、続けていれば少しずつ着実に積み上がる。3か月しか続けなければ3か月分の成果、1年続ければ1年分の成果、5年続ければ5年分の成果が、自分の会社に蓄積されていく。
10年後の安心は今の行動から
「継続型の収入」という言葉を聞くと、どこか雲をつかむようなイメージを持つ人もいるかもしれない。けれど、難しく考える必要はない。
要は、「一度きりの労働報酬」ではなく、「提供した価値をもとに何度も報酬を得られる仕組み」を作ることに尽きる。
経営環境が目まぐるしく変化する現代において、小さな会社こそ身軽さを活かして新しい価値を創造しやすい。
大企業にはできない柔軟性で、ニッチな分野や地元密着型のサービスを継続的に提供し、インカムゲインを得る道が必ずあるはずだ。
これからの時代は、単に価格競争に突入して消耗戦を続けるのではなく、いかにして「自社だからこそ出せる付加価値」を市場に届け、それを継続型の収入につなげるかが勝負になる。
いったん軌道に乗った仕組みは、ビジネスの土台をしっかり支え、あなたの会社を次のステージへ導くだろう。
10年後を振り返ったとき、「あの時からコツコツと続けてきたおかげで、今の安定がある」と言えるよう、今日からぜひ、自社の強みを活かした継続型の収入づくりにチャレンジしてみてほしい。
自分が頑張って働かなければ収入が得られない、という不安から解放されれば、社長として会社をもっと自由に、そしてクリエイティブに動かすことができるはずだ。
小さな一歩が、未来の大きな飛躍につながる。継続型の収入を味方につけて、これからの時代をしなやかに、そして「使って減らぬ金百両」を実現していこう。