
スモールビジネスの経営者にとって、無理な拡大や年商の見栄よりも大切なのは、「使って減らぬ金百両」のような仕組みをつくることだ。月10万円の積立を15年続けることで、夫婦で3600万円の非課税資産が築ける。これを年利10%で運用すれば、毎月30万円の税金ゼロの収入が得られ、金に追われない人生が実現する。資本主義を味方につけ、静かに豊かさを育てる生き方こそが、これからの経営戦略である。(内田游雲)
内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者(特にスモールビジネス)に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
江戸時代の戯れ歌に、こんな一節がある。
「幸せは 弥生三月花の頃
おまえ十九で わしゃ二十
死なぬ子三人 親孝行
使って減らぬ金百両
死んでも命があるように」
なんとも人間くさくて、どこか愛おしい。若い夫婦が春の花を見ながら、三人の健康な子どもと、親孝行、減らぬ金百両、そして永遠の命まで夢見る。まさに庶民の欲望がすべて詰まっている。だがこの中で、私の胸にいつまでも引っかかっているのが「使って減らぬ金百両」である。
使って減らぬ金百両の現実化
百両とは、今で言えばざっくり500万円。これが使っても使っても減らない。なんと魅力的だろう。だがこれは、単なる空想の話ではない。現代にも、この“減らぬ金”を手にする手段はある。
たとえば、夫婦二人で月に50万円あれば、そこそこ豊かに暮らせる。その50万円が毎月確実に補充される仕組みがあれば、どれだけ心が安らぐことか。働かずして入ってくる金。それこそが“使って減らぬ金百両”の正体なのだ。そしてこの仕組みを目指すのが、「気の経営」の本質である。
多くの経営者は、売上や規模を追ってしまうが、実際には月50万円が減らずに入り続ける状態こそ、本当の勝利だ。下手に1億円を握るよりも、毎月の自動収入があるほうが、精神的にも経済的にも自由になれる。
では、その“減らぬ金”はどう生まれるのか。キーワードは「収入の流れ」と「税金を取られない構造」だ。つまり、事業で稼いだ金を投資に回し、それが配当や利益となって戻ってくる仕組み。そして、その収入に税金がかからなければ完璧だ。
ここで登場するのがNISA制度である。夫婦で取り組めば、生涯非課税枠は3600万円。年利10%で運用すれば、月30万円が非課税で補充される。“使っても減らない金”は、知識と制度で作れる時代に入っているのだ。
江戸の庶民が戯れ歌に夢を込めた“使って減らぬ金百両”。それは、現代においては、リアルな戦略と仕組みで手に入れることができる。空想ではなく、現実の道として。浮かれず、追われず、しかし確実に流れ続ける“金の仕掛け”を持つ。これこそ、人生後半のビジネスの正解である。
資本主義で生き残る唯一の道
この世界のゲームルールは単純だ。金がない者から脱落する。目の前にトマトが転がっていても、金がなければ拾うことすらできないのが資本主義というシステムである。問題は、そのルールに気づかないまま、いい人を演じて消耗している人が多すぎるということだ。
大企業はルールをよく知っている。だから社員には「やりがい」や「やさしさ」を配りながら、自分たちは確実に金と時間を“資本”に変えている。つまり、資本主義は「やりがいではなく、金が正義」の世界だということである。
では、小さな会社の経営者はどう生き抜くか? 答えはひとつ。「稼いで、抜かれず、増やす」である。そしてここに最強の味方がいる。NISAという合法の“税ゼロ兵器”だ。これを活用すれば、配当も値上がり益も非課税。年間360万円を稼いでも、税金はびた一文も払わず済む。これは、働かずして毎月30万円を手にする方法が、国家公認で許可されているということなのだ。
しかも、肝心の「どのくらい増えるのか」だが、ここが大事だ。世の中では年利3%や5%が堅実と言われるが、長期でしっかり運用すれば10%以上のリターンは誰でも狙える。たとえば、S&P500や全世界株をベースに、長期的に積立てていけば、過去の実績から見ても年平均10%超えは現実的な話である。

そしてこの10%という数字は、資本主義の“チートコード”である。なぜなら、3600万円をNISAで運用し、年10%で回せば年間360万円が非課税で丸ごと手元に残る。これは事業で年600万円稼ぎ、税金で引かれて残る手取りとほぼ同じ。つまり、働く代わりに金が働いてくれる構造が完成する。
税金は取られず、利益は減らず、金は勝手に増える。この状態を“使って減らぬ金百両”と呼ばずして何と呼ぶか。たった一度、戦略的に構築すれば、あとはほとんど手がかからない。まるで自動給餌機のように、毎月、金が勝手に口座に補充されていく。ありがたやありがたや。
資本主義で生き残るとは、正面からぶつかることではない。ルールを理解し、抜け道を合法的に突き進むことだ。税を制し、資本を操る者だけが、静かに、そして着実に自由を手に入れる。そういう時代に、もう突入している。
金持ちとは資産を持つ者のこと
「金持ち=収入が多い人」と思っているうちは、まだ資本主義の表層にしか触れていない。本当の金持ちとは、“自分が動かなくても金が入ってくる仕組みを持っている人”のことだ。
たとえば病気で半年休んでも、毎月30万円の収入が自動で振り込まれてきたら? しかもその金が税金ゼロで手に入るとしたら? そんな夢のような仕組みが現実にある。それがNISA制度であり、夫婦で非課税運用できる枠は3600万円。そしてこれは、富裕層向けの話ではない。きっちり設計すれば、スモールビジネスの経営者なら現実に達成可能な数字である。
具体的に言えばこうだ。一人あたり月10万円を積み立てる。年間で120万円、15年で1800万円。夫婦でこれを行えば、ぴったり3600万円になる。この数字を聞いて「そんなの無理だ」と即答するのは、おそらくサラリーマンである。会社の都合で給料が決まり、税金や社会保険料が天引きされ、手元に残る金が予測不能な彼らにとって、月10万円の積立は確かにきつい。
だが経営者は違う。売上と利益を調整できるし、経費と報酬のバランスを自分で設計できる。月10万円を未来の自分への“仕送り”として積み立てることは、決して不可能ではない。むしろ、経営者こそがNISAの仕組みに最も適している存在なのだ。
そして、その3600万円を年利10%で運用すれば、年間360万円、月30万円の非課税収入が生まれる。これは、働かずして、安定して、税金も取られずに手元に入る“現代の使って減らぬ金百両”だ。
大事なのは、1億円のキャッシュを目指すことではない。**金を持つよりも、金の流れを持つ方が強い**。事業は不安定でも、資産からの非課税収入があれば、多少の売上の波など何ともない。金持ちとは、口座の残高を誇る人ではない。**生活を支える“仕組み”を持っている人のこと**だ。
スモールビジネスの経営者にとって、月10万円の積立は夢ではなく、戦略であり、現実である。今のあなたが、15年後のあなたに給料を払い続ける。これが資産を持つということの意味だ。
拡大せずに資産を築く戦略とは
「会社を大きくして年商を増やさなければ資産なんて作れない」と思っている人は、まだ“大きいことはいいことだ教”の信者である。だが現実は逆だ。拡大すればするほど、手元に金が残らなくなるのが小さな会社の宿命だ。
理由は簡単だ。売上が増えれば、それに合わせて人件費、仕入、家賃、システム、税金も全部増える。しかも、拡大すればするほど「管理」と「競争」と「見栄」という3大ストレスも自動でついてくる。しかも、最終的に残るのは“多忙”だけ。スモールビジネスにとって拡大とは、利益ではなく苦労の倍増を意味する。
では、どうするか。答えは明確だ。拡大ではなく、“濃縮”する。売上を増やすより、残る金の流れを作る。そして、その残る金を投資で増やし、非課税で受け取る構造をつくる。これこそ、拡大せずに資産を築く最短距離である。
たとえば月10万円を積み立てる。売上を無理に2倍にするより、この10万円をしっかり残すほうがよほど難易度が低い。そしてその10万円を毎月積み立てれば、15年後には1800万円の資産になる。事業で作った粗利を、資産に変換していく行為そのものが“気の経営”の本質なのだ。

しかも、この戦略は“競争不要”である。顧客を奪い合う必要もなければ、広告で大金を消費する必要もない。無理に規模を追わず、少数の上客に深く貢献することで得た利益を、黙って資産に変える。これは“ゲリラ戦”どころか、“忍者戦術”である。静かに仕込み、静かに増やす。
そもそも、スモールビジネスは市場規模が小さい。だから無理に拡大しようとすると、どうしても価格競争や他社との衝突が起きる。だが、拡大を捨てた瞬間に、すべての戦いから降りられる。戦わなければ、負けることもない。勝ち負けではなく、“自分が豊かになればそれでいい”という軸で動けばいいのだ。
そして、この“戦わずして増やす”戦略の行き着く先にあるのが、「使って減らぬ金百両」という世界である。見せかけの年商や、無理な成長ではなく、仕組みによって毎月30万円の非課税収入が淡々と入ってくる状態。これこそが、スモールビジネス経営者の最終勝利形態である。
金が減らない安心がもたらす幸福
金がないと不安になる。だが、本当に人を蝕むのは「金が減っていく恐怖」だ。毎月口座残高をにらみながら、あと何日生きられるかを計算するような日々。これが長く続くと、気力も思考も奪われていく。
逆に、減らない金の流れがひとつでもあれば、人は驚くほど心が安定する。働かなくても毎月30万円が口座に振り込まれる。それだけで、人間は急に穏やかになる。やりたいことができる。人に優しくなれる。決断に余裕が出る。そう、幸福とは、何も贅沢することじゃない。減らない金があることなのだ。
この「使って減らぬ金百両」という言葉が、江戸時代の庶民の夢だったことに、今さらながら納得する。
「幸せは 弥生三月花の頃
おまえ十九で わしゃ二十
死なぬ子三人 親孝行
使って減らぬ金百両
死んでも命があるように」
ここに描かれているのは、大金持ちの夢ではない。普通の人が、普通に生きていける理想の暮らしである。金が尽きる不安から解放され、家族と静かに季節を感じて暮らす。それこそが本当の幸福だったのだ。
現代でそれを実現するには、「拡大」ではなく「仕組み」を作るしかない。しかもその仕組みは、国が用意してくれた。NISAという最強の非課税制度を活用し、自分専用の金の泉を築く。毎月10万円、たった15年間。これだけで、老後はもちろん、仕事が減っても暮らしていける土台ができる。
大事なのは、派手に儲けることではない。静かに増える構造を持つこと。その構造があるだけで、人生の質ががらりと変わる。未来が怖くなくなる。事業も楽しめる。挑戦もできる。笑って寝られる。
そう考えると、「使って減らぬ金百両」は決して絵空事ではない。むしろ、資本主義の裏技を知る経営者だけに許された、実に現実的なゴールなのだ。
もう、焦って登る必要はない。稼ぎすぎて疲弊するのは、人生の本末転倒である。
拡大せず、戦わず、他人と比べず、金を追うより、金が減らぬ仕組みを持てば、“静かに仕込んだ金の流れ”に身を預けるだけで、幸福は向こうからやってくる。