「世の中お金じゃない」が通用しない瞬間－お金を稼ぐリアルと生き残り術

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内田游雲（うちだ ゆううん）
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究－洩天機－」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営（メルマガ編）】も発行中（無料）

私はよくお金の話をするので、
「お金の話ばかりしている」
「そんなにお金が好きなのか」
そう言われることが案外多い。

だが、実際に苦しい経験をした人間にとって、お金を稼ぐことは単なる欲望ではなく、生きるための切実な行為なのだ。

特に小規模事業の経営者は、会社と自分の生活が直結している。
会社が傾けば、家族の生活が立ち行かなくなる。
いくら「世の中はお金だけじゃない」と言われても、現実はそんなに甘くない。

ひとたび経営状態が悪化すると、まずは支払いや仕入れがストップし、あっという間に資金繰りが回らなくなる。
商談相手からは「支払いはいつになる？」と催促され、銀行口座の残高は見る見るうちに減っていく。
やがて事務所の家賃は滞り、電話やインターネットが止まる。
こうなると取引先とも連絡が取れなくなる悪循環が始まる。
振り込まれるはずの入金も遅れがちになり、キャッシュが入らない。
こうしてジリジリと負のスパイラルにはまり込むわけだ。

私自身もかつて、年収3000万円ほどあった会社を、ある理由で突然閉めた経験がある。
そのとき、貯金はすべて会社の借金返済に回してしまい、収入はゼロ。
いきなり極貧生活がスタートした。
電話は止まり、ガスと電気も次々と停められた。
「昔は水道だけは止められない」と言われたが、今はほとんど外注化されているので、あっという間に止まるのが現実だ。
資本主義社会はとてもシビアだと痛感した瞬間だった。

お金を稼ぐ必要性は、きれいごとでは片づけられない。
小さな会社といえども、回すべき支払いは確実に存在する。
人件費、オフィスや店舗の賃料、光熱費、在庫管理費・・・。
これらは経営者の「好き・嫌い」にかかわらず、常に容赦なく襲いかかる。
お金はどうやっても必要になるし、稼がなくては先が見えない。

とはいえ、「お金がないと生きていけない」と訴えても、周りにいる人が全員助けてくれるわけではない。
小さな会社の経営者ほど、そうした厳しさを肌で感じているだろう。
だからこそ、もっと「お金を稼ぐことのリアル」から目を逸らさず、しっかりと向き合う必要がある。

小さいながらも、自分の会社を持っていると、
「自分が社長だから倒産はないだろう」
とどこかで思いたくなるかもしれない。

だが実際には、景気の波や取引先のトラブル、はたまたコロナのような予期せぬ外的要因などで、あっさりと会社が回らなくなることがある。

特に一人社長や家族経営の場合、リスクヘッジも大企業ほど多彩ではない。
背水の陣で働いているケースも多く、突然のトラブルを避ける手段が限られている。

「自分は関係ない」と思っている間はまだ幸せだ。
だがいったん倒産や廃業が現実味を帯びてくると、目の前の景色が一変する。
取引先への支払いが遅れれば信用も失い、自分の会社が社会的に死んだも同然の状態に陥る。
そうなれば売上どころの話ではなく、自分の生活もままならなくなる。
下手をすれば、事業用ローンの連帯保証によって、自宅や貯金まで失う羽目になる。

この「突然の会社の終わり」は、どんな企業でも起こりうる。
大企業だって、一見安定していそうでも、ひとたび大きな不祥事や経営判断の誤りがあればあっさり凋落する。
小さな会社なら尚更だ。運転資金に余裕がなければ、ひと月の売上が予想以上に少ないだけでも瀕死の状態に追い込まれることも珍しくない。

そこでカギとなるのが、お金を稼ぐ手段を複線的に持つことだ。
会社の本業の売上に頼りきるのではなく、サブ的な収入源を作る、あるいは個人のスキルを別の場で生かして副業をするなど、キャッシュフローの流入口を複数確保しておくと、万一のときのダメージを軽減できる。

いま、小さな会社を経営している人こそ、常に「うちも突然ダメになるかもしれない」という前提で行動したほうがいい。
追い詰められたときに慌てて資金調達や新規事業を考えても遅い。
日頃からいかに「もしものとき」を想定して、お金を稼ぐ道を広げておくかが勝負どころなのだ。

一度、お金がなくなるという体験をすると、どれほど生活がすぐに崩れていくかが身に染みる。
特に会社を閉めた直後の生活は、実にシビアだった。
まず電話代や光熱費が払えずに通信が止まり、ガスが止まり、電気が止まる。
最後には水道も止まる。
想像してみてほしい。真冬に暖房も使えず、食器を洗う水さえない状況に陥るのだ。

また、食べ物を買うお金がないとなれば、栄養面も健康面もたちまち深刻な問題になる。
野菜が高いときは、スーパーで捨てるはずのキャベツの外側の葉をうさぎの餌にするからともらってきてサラダ代わりにしたこともある。
どこかで聞いた話、あるいは昔の物語のように思うかもしれないが、これが実際に起こる。
貯金が一気に底をついてしまえば、あっという間に「食べられない」事態を迎えるのだ。

そうなると、何を考えるか。
とにかく「お金を稼ぐ」ことで頭がいっぱいになる。
なにしろ、明日の食費さえ捻出できないから、どんな仕事でもいいから見つけなければならない。
世の中には「お金がすべてじゃない」と語る人もいるが、実際にお金がゼロになったら、そんな綺麗事は言っていられない。
生活保護に頼りたくても、受給までには手続きや審査が必要で、すぐにもらえるわけではない。

もちろん、誰もが必ずこうなるとは言わない。
だが、自分や家族を守るためにも、貧乏のリアルを知っておくことは決して無駄ではない。
小さな会社の経営者は常にリスクを背負っているからこそ、万が一のときに備えて、「今のうちにお金を稼ぐ」重要性を肌で感じておく必要がある。
最悪のシナリオを知ることで、いま何をすべきかが明確になるはずだ。

貧困と聞くと、多くの人は生活保護を思い浮かべる。
確かに制度としては存在するし、一定の基準を満たせば受給できる。
しかし、現実はそう甘くない。生活保護を受けるにはさまざまな審査や手続きがあるうえ、受給に至るまでの期間は無収入のまま過ごすことになるケースも多い。
小さな会社を経営していた人が廃業してすぐ生活保護を申請しても、会社名義の資産や借金との兼ね合いで手続きが複雑化する可能性もある。

さらに、生活保護をもらうことには社会的偏見もつきまとう。
「経営者なのに、なぜ保護を受けるんだ」
「怠けているだけではないのか」
そんな声も聞こえるかもしれない。
現代社会にはいまだに生活保護に対する偏見が根強い。そうしたバッシングを恐れて受給申請をためらう人もいるのが現状だ。
さらに言えば、保護を受けたところでそれは最低限の生活費に過ぎない。
会社再建はおろか、再び自分で仕事を立ち上げるための資金など望むべくもない。
つまり、受給できたとしても、それはあくまで「生き延びるための最後の砦」であって、そこから先の未来を切り開くにはほど遠い制度なのだ。

「生活保護より厳しい状態」というのは、むしろ受給に至るまでの空白の期間だったり、そもそも基準を満たせず断られてしまう人のほうが苦しんでいることも多い。
だからこそ、小さな会社の経営者にとっては「いざというときにどうやって食いつなぐか」を、平時から考えておくことが重要になる。
「まさか自分が」という思い込みを捨て、自分にも起こりうることとして備えておくべきだ。

現実に、事業がうまくいかなくなるタイミングは誰にでも訪れうる。
大企業に勤めていてもリストラされることはあるし、公務員だってリスクがゼロではない。
厳しい状況に追い込まれないためにも、日頃から「もしものとき」に備えた行動を積み重ねることが大切だ。
わかりやすいところでは、必要最低限の生活資金を蓄えるだけでなく、複数の収入源を得る工夫をする。
さらに支出を抑える技術や、信頼できるネットワークを作っておくのも手だ。
信頼関係は、一朝一夕で築けるものではない。
普段から周囲と協力して新しいお金の稼ぎ方を模索する姿勢を持つことが、いざというときの救いになる。

お金は、有り余るほどあればもちろん困らないが、まったくなくなると本当にどうしようもなくなる。
だからこそ、小さな会社の経営者には「生活保護より厳しい道」を歩まずに済むよう、早め早めの対策が必要だ。

小さな会社を経営していると、時には「来月の家賃と給料を払えるだろうか」と不安が頭をもたげることがある。
従業員を抱えているなら、彼らの生活も守らねばならない。
そう考えると、いつも危機感を持っていなければならないように思えてくるだろう。

しかし、その危機感こそが「お金を稼ぐ」ための原動力にもなる。
漠然とした不安を抱えているだけではなく、
「どこで新しいお客をつかむか」
「どうやって売上を伸ばすか」
「必要なコストはどこで削れるか」
など、具体的な打開策を探っていくうちに、今まで気づかなかったビジネスチャンスやアイデアが浮かぶこともある。

不安があるということは、まだ生存本能がしっかり働いている証拠だ。
小さな会社だからこそ、動きが軽いメリットを活かして、新しい事業を立ち上げたり、オンラインで全国相手に商売をしたり、他社とコラボレーションして相乗効果を狙ったりできる。
大企業のようなガチガチの組織では実行しづらいことも、個人や小規模だからこそスピーディーに動けるのだ。

このとき、成功のカギとなるのは、
「どれだけ柔軟にアイデアを試せるか」
「どれだけスピード感をもって行動できるか」
だ。
経営者が頭を抱えていても、お金は自然には生まれない。
自らチャンスを創り出す行動力こそが、小さな会社を支える大きな力になる。
明日は我が身と覚悟したうえで、不安を原動力に変えて、どんどんお金を稼ぐ道を模索しておくことだ。

結局、いまの社会は資本主義で回っている。
美談や綺麗事だけでは、自分も家族も守れない。
だから、お金を稼ぐことを全力で考えるのは悪いことではない。
むしろ必要不可欠だ。
どんなに好きな仕事をしていても、収益がなければ会社も人も続かない。
どんなに素晴らしい理念を掲げても、生活を維持できなければ生きていくことすらできない。

いまの社会は弱肉強食の資本主義だ。
理想や情熱だけでは食べていけない現実がある以上、小さな会社の経営者こそ、お金を稼ぐことを最優先に考えなければならない。
どれほど素晴らしい商品を作っていても、売れなければ会社は続かない。
資金繰りができずに倒れれば、従業員や取引先にも迷惑をかけることになるからだ。
だからこそ、小さな会社の経営者であれば、お金は「死ぬまで稼ぎ続ける」のが大前提だ。

同時に、稼ぐだけではなく、日頃からできるだけ借金を減らす工夫も欠かせない。
利益を確保できたときは無闇に設備投資や先行投資に回すのではなく、まずは借金の返済を優先して借金返済の負担を軽くする意識が重要だ。
複数の銀行と取引があるなら、一社への依存度を下げるよう、少しずつ融資の比率を調整してリスクを分散するとよい。
ローン契約の内容は時間が経つにつれ変化することもあるため、より金利の低いプランへの借り換えを検討したり、条件の引き下げを交渉したりするのも賢いやり方だ。
普段から在庫や固定費をこまめにチェックして、無駄があれば削減する努力を継続すれば、借金の総額は少しずつ減っていく。
背負う借金が小さくなるほど、経営は身軽になり、いざというとき新たな挑戦をしやすくなる。
基本的に借金はできるだけしないほうがいい。

こうした心がけを続けるうちに、資本主義の波に巻き込まれそうになったときでも、慌てずに最善の手を打てるようになる。
借金に追われない状態を作れれば、ビジネスの方向転換や新規事業の立ち上げもスピーディーに行える。
実際、自由なキャッシュフローが確保できてこそ、本当にやりたかった事業を進めたり、周囲に対して余裕ある支援ができたりするのだ。

もう一つ忘れてはいけないのが、ただがむしゃらに働くだけでも長続きはしないことだ。
体力や精神力が追いつかず、結局立ち行かなくなるリスクがある。
経営者自身が健康を失うことは、会社の存続を脅かす一大事だ。
うまく息抜きしながら、どこに力を入れ、どこで手を抜くかのバランスを取ることも重要だ。
自分が元気でないと、新しいアイデアもひらめかないし、アクションを起こす余裕もなくなる。

お金が無いというのは、とにかく辛い。
未来が見えなくなり、死にたくなるのだ。
だから、お金は綺麗事抜きで稼がないとダメだ。

最終的に、「世の中はお金だけじゃない」という言葉の本当の意味が分かるのは、十分なお金を稼いで、ある程度安定したときだ。
お金に追われている間は、そのフレーズを聞くたびにイラッとする。
だからこそ、まずは資本主義社会で生き残り、次のステージへ行くために、お金を稼ぐ手段を確立しよう。
それが、小さな会社を未来へつなげるための唯一のルールである。