お金を受け取る力を高めると収入の流れが劇的に変わる

スモールビジネスを営む多くの人は、昼夜を問わず熱心に働いているのに、なぜか十分な収入の流れを得られていないと嘆くことが多い。実は、その原因は「受け取る能力」に大きく左右される。どれだけ優れたサービスや商品を用意していても、無意識のうちにお金を拒んでしまっては、豊かさとは程遠い結果に終わってしまう。

たとえば「たくさんのお客様に喜んでもらいたい」と願っていても、いざ対価を受け取る段階になると、「私はまだまだ」「こんな報酬をもらう資格はない」と恐縮してしまう人は少なくない。こうした心理の背景には、「受け取るよりも与えるべき」「謙虚こそ美徳」といった価値観が染みついていることが考えられる。

もちろん、与えることが間違っているわけではない。むしろ与え合いの精神は、人間関係やビジネスを円滑にする重要な要素だ。ただし与えることばかりを重視し、受け取ることにブレーキをかけてしまうと、自分自身のビジネスも心身の健全さも維持できなくなる。お金のマインドを健全に保つには、自分が受け取ることを当たり前の権利として認める必要がある。

実際、経営者が無意識にお金を拒む理由をよく聞いてみると、「お客様に申し訳ない」「安いほうが喜ばれるかも」「自分の価値に自信がない」という声が上がる。だが、本来お金は単なる流れにすぎない。世界中をぐるぐると流れている大量のお金のうち、あなたのもとに流れ着く分を受け取るかどうかは、最終的にあなた自身の選択にかかっている。ここを理解しなければ、頑張るほどに疲弊してしまう「苦しい経営」から抜け出せない。

「自分なんて大したことない」
「この程度のサービスで高い報酬をもらうのは気が引ける」
そんなふうに感じる人は多い。だが、「価値がない」という思いは幻想にすぎない。なぜなら、自分の価値は結局、自分自身の頭の中で決まるからだ。もし「私はふさわしくない」と思えば、その思い通りの結果になりやすいし、「私には十分な価値がある」と信じれば、結果も自然と変わってくる。

実際、世の中には大した実力がないように見えつつも、しっかりと高収入を得ている人がいる。逆に優秀なのに薄給に苦しむ人もいる。ここからわかるのは、客観的な能力だけが報酬を左右するわけではないという事実だ。極端な話、「自分に価値があろうがなかろうが、金を得ることはできる」。だからこそ、まずは「価値がない」という先入観を手放すことが重要になる。

本当のところ、あなたの価値を評価するのは他の誰でもない。「ふさわしくない」と思っているのは、自分自身だ。それなのに「もっと頑張らなきゃ」「提供する価値を増やさなきゃ」とただ奮闘しても、肝心な受け取る段階で「こんなに報酬をもらっていいのかな」と後ずさりしてしまうのでは、本末転倒だろう。長期的に見ても、ビジネスの継続には価値の提供と同じくらい、正当な対価を受け取る行為が欠かせない。

この章で覚えておきたいのは、「自分の価値があるかどうか」という問い自体がナンセンスだということ。「価値がある」と思うならあるし、「ない」と思えばない。それくらいあやふやな存在なのだ。「私は相応の報酬を受け取っていいんだ」というマインドを持つことが、豊かな収入の流れを呼び込むための第一歩になる。

「受け取る力」は才能のようでいて、実は誰にでも鍛えられる要領が存在する。まずは日常の小さなことから「報酬を堂々と受け取る」習慣をつくるといい。たとえば、お客様から感謝の言葉をもらったとき、照れずに「ありがとうございます」と素直に喜ぶ。たったこれだけでも、「自分は与えられるにふさわしい」と心で感じやすくなる。

それと同時に、成功体験を積み重ねるのも効果的だ。小規模のプロジェクトでもいいから、仕事を一つきちんと完遂し、それに対して決めた報酬をしっかり請求する。請求書を発行するときに胸がドキドキするなら、そのドキドキこそが「受け取り下手」な証拠である。しかし、何度か積み重ねるうちに「これがビジネスとして普通の流れなんだ」と腑に落ちてくる。

一方で、「謙虚さ」と「自分を低く見積もること」は全く違う。謙虚さとは、相手をリスペクトしつつ自分の価値もきちんと認める姿勢だ。しかし「自分には無理」「自分なんて」と自己卑下の度合いを強めると、それは素直にお金を受け取りづらい状態をつくる。結果、経営が続かず、周囲にも十分な価値を提供できなくなる。

覚えておきたいのは、受け取る行為は相手にとっても喜びを与えているということだ。与える人がいれば受け取る人がいるし、受け取る人がいれば与える人がいる。「受け取る」と「与える」はコインの裏表であり、一方だけを過剰に求めることは不可能だという視点を持つだけで、気持ちがずいぶん楽になる。

昔から「受け取るより与えよ」と言われ続けてきたが、これを文字通りに受け止めすぎると危険だ。与えたい気持ちが強すぎて、実際に利益を残せなくなってしまうからだ。ビジネスは奉仕活動ではなく、価値の提供と収入の流れの両立を図る場である。自分の取り分を遠慮してばかりだと、経営はじきに行き詰まる。

「与えるほうが優れている」「受け取るのはなんだか後ろめたい」と思い込んでいると、せっかくのチャンスを逃すだけでなく、相手から見ても「気遣いを無下にされている」ような印象を与える。実際、「せっかく相手が与えようとしているのに、しぶしぶ受け取られたら嫌な思いをする」という構図は意外に多い。お金のマインドをきちんと整えて「喜んで受け取る」姿勢があると、相手も気持ちよく次の取引へと進んでくれる。

さらに厄介なのは、「受け取らないとどうなるのか？　他の人が、その分を多く受け取るだけだ。」という事実だ。あなたが遠慮したり、受け取るべき報酬を拒んだりしても、そのお金の行き場はほかに移るだけで、世界全体の収入の流れがあなたを待ってくれるわけではない。ちょっとドライな言い方かもしれないが、ここを理解していないと過剰な無償奉仕が習慣化して、結局ビジネスを続けられなくなる。

もちろん、与える気持ち自体は素晴らしい。だが、それを実践するためにも、まずは自分がしっかり受け取って、ビジネスを継続できる状態を保つことが大前提だ。豊かさとは、与える行為と受け取る行為が同時に循環して初めて成り立つものだと認識しておきたい。

お金を呼び込む人たちの多くは、共通して「お金は悪いもの」「大きく儲けるのははしたない」といった罪悪感を抱いていない。むしろ「ビジネスで価値を提供し、お金が入るのは当然」という心構えを自然に持っている。ある種のポジティブさと合理性を併せ持ったお金のマインドと言えるだろう。

「お金は悪」という刷り込みがあると、どうしても儲け話にネガティブなイメージを抱きやすい。だが、提供する価値がちゃんとあり、顧客もそれに納得しているのであれば、大きな報酬を手にしても何ら問題はない。むしろ、そこで得た余力を再投資し、より大きな価値を提供していく好循環を生むことこそがビジネスの醍醐味でもある。

「お金が集まる人は、『受け取ること』に抵抗がない」というのはまさに核心を突いている。抵抗感があると、どこかで営業を自粛したり、サービスの価格を不当に安くしたり、過剰なオマケをつけたりしてしまう。そうなると、お客様も「このサービスは安物なのかな？」と誤解してしまうかもしれない。一方、報酬を堂々と提示し、感謝をもって受け取る姿勢は、顧客にとってもわかりやすく、安心につながる。

お金を呼ぶ思考回路は、感謝と自信をセットにして行動に移すことだ。「お客様への思いやり」と「自分が正当に報酬を得ること」は相反しない。双方をうまく両立することで、豊かな収入の流れが生まれ、ビジネスも人生の質も同時に向上していく。

ここまで「受け取る能力」の重要性を説いてきたが、実際に継続して豊かさを享受するには日常習慣のアップデートがカギとなる。まずは、自分がお金を受け取る瞬間に喜びを感じられるマインドを常に持ち続けたい。そのために、有料サービスの申し込みがあったら「ありがとうございます、私も全力でサポートします」と素直に受け止める習慣を作るのだ。これだけで、お金の流れを阻む心のバリアが徐々に消えていく。

また、日頃からビジネスの数字をきちんと把握し、あなたが提供している価値を客観的に捉えることも大切だ。サービス内容や商品に込めた労力や独自性を明確に言語化し、それに相応する価格を提示する。もし価格を上げるべきか悩んだときは、過去の成果や顧客の声を振り返ってみるといい。根拠があれば、自信を持って新しい金額を打ち出せる。

とはいえ、人間は弱気になるときもある。そんなときは「受け取らないとどうなるのか？ 他の人が、その分を多く受け取るだけだ。」という言葉を思い出すとよい。あなたが受け取らなかったお金は、ただ別の場所に移動するだけだ。結果的にビジネスが続かなくなれば、顧客に価値を提供する機会も失う。そう考えると、しっかり受け取ることは社会に対する責任でもある。

最後に、「お金とは単なる流れに過ぎない」という原点を忘れないようにしたい。与えると受け取るがバランスよく循環しているビジネスは、長期目線でも安定しやすい。自信を持って金を受け取り、さらに新しいチャレンジに投資し、顧客と共に成長していく。そうしたスタイルこそ、スモールビジネス経営者が豊かさを継続するためのコツである。

どんなに素晴らしいアイデアや価値の提供があっても、受け取る段階で自らブレーキをかけてしまえば、成果は得られない。お金のマインドを健全に保ち、堂々と報酬を受け取りながらビジネスを回し続けていけば、あなたのもとへ豊かな収入の流れが生まれ、その先で大きな充実感と継続的な発展を楽しめるようになる。