貧困による格差問題は絶対に解決できるはずがない。それを解決する答えなど、そもそも最初から存在しないのだ。格差社会こそが、資本主義社会の本来の姿だということである。格差問題は、資本主義の崩壊でしか成し遂げられないと、考えた方が自然である。だったら、この資本主義というルールを逆手に取って利用し、生きていくことしか道がないのである。(内田游雲)
profile:内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。中小企業や個人事業等の小さな会社のコンサルティングを中心に行う。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的コンサルティングには定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めて経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「洩天機-運の研究」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
貧困による格差問題は解決できない
「格差はなくならない」
これが、私が最近、たどり着いた結論である。
貧困による格差問題は絶対に解決できるはずがないという確信だ。それを解決する答えなど、そもそも最初から存在しないのだ。
貧困問題は小手先では変わらない。あえて貧困問題が解決する方法がひとつあるとしたら、それは、国そのものが凄まじく経済成長して国民全員が極度の金持ちになることくらいだろう。要するに、国が爆発的に成長したら良いということになる。
「じゃ、それが解決方法なのだから国を成長させればいい」という話になるのだが、それが簡単にできたらこの世から途上国などという分類は、既に消えてなくなっているはずだ。日本も30年近く経済成長できておらず、これからも経済成長ができる見込みもない。
そもそも、歴史上で貧富の格差がなくなったことなどない。一時的に格差が縮小するのは、戦争や大災害が起こって、ほとんどすべての人が一文無しになった場合だけだ。それすらも時間とともに、復興し格差が開いてくる。つまり格差社会こそが、資本主義社会の本来の姿だということである。
それでも資本主義の中で生きるしかないい
しかし、その資本主義を否定しようとしても、誰もが現代文明から離れられないだろう。それは、誰もがこの弱肉強食社会と化した資本主義の中で生きるしかないということを意味している。
たとえ、格差の一番下に押し込められたとしても、その社会を破壊できない以上は、その世界で必死で生きるしかないのだ。
資本主義が長らく続くと格差が広がっていくのが資本主義社会の姿である。そして、この格差は何をどうしても埋められないのだ。
仮に累進課税をかけても、富裕層は必ず法の穴を付いて資産を動かし、あるいは隠し、あるいは何らかの形に変換させて最もダメージのない方法を捜し出す。 さらに富裕層はロビー活動や政治的な圧力をかけることによって、税制そのものをザル化していく。
そして、政治家もまた富裕層への減税に積極的になる。なぜなら、政治家たちもまた「自分たちが金持ち」だからに他ならない。つまり同じ穴の狢(むじな)だからだ。
政治家が自分たちにダメージを与える税制を制定するわけがない。もちろん高級官僚も同じだ。自分たちにダメージを与えるどころか、逆に自分たちだけが生き残れるような巧妙な税制を作り上げるのがオチである。
消費税は格差社会を作り出す
改めて振り返ると、法人税や「高所得者層」の税金を引き下げ、代わりに逆累進課税(低所得者層の負担が重い)の消費税を導入し、増税していくというのは、「日本国を格差社会にする」という政策目的があったことが見えてくる。
はたして、政治家や官僚が意識していたのか否かは知らないが、論理的に必ずそうなるものである。消費税は、確かに日本を格差社会に変貌させ、国力を凋落させ、共同体を破壊していった。
もちろん政府は、「消費税は日本の格差拡大を目的にした税金です」とは説明できないため、消費税法の第一条は、「毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。」となっている。
税制が富裕層に対して骨抜きになると、数十年経つと富裕層とそれ以外の層の格差は凄まじい差となって現れることになり、この資産が世代に受け継がれることによって、格差は埋められず、固定化したままとなる。
結論として、格差問題は、「資本主義の崩壊」でしか成し遂げられないと考えた方が、自然ということになるのだ。
資本主義的マネーリテラシー
昭和の時代、日本は「一億総中流社会」と呼ばれていた。しかし、平成の長期不況を経て、すでに、そうした牧歌的な社会は崩壊してしまった。
そんな日本において、なんとかこれからも生き残っていくためには、資本主義的マネーリテラシー(金の知識)を身につけることが必要になる。この世界は誰がなんと言おうと、資本主義であり、その中心は金だからだ。
そうであれば、この資本主義というルールを逆手に取って利用し、生きていくことしか道がないということなのだ。
つまり、金に対する知識やスキルがあるかどうかが、今後の日本で生き残っていけるかどうかの分かれ目であるということだ。
これは、小さな会社や個人事業の社長であっても同じである。金の知識をもたずに、偶然に頼って、この世界を生きていくことは、できるはずもない。
その上で、この世の中の仕組みを知ることだ。とりわけ、資本主義の仕組みを知ることである。そして、その仕組みに合った仕事(ビジネス)の仕方をして、資本主義者として生きることが必要になるのだ。
これが気の経営という考え方の基本となる。