富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる

多国籍企業が市場を寡占するグローバリズムによって、一部の富裕層が利益を独占し格差が拡大した。『21世紀の資本』が示すように「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」という現実が広く認識され、EU離脱やトランプ現象といった反発が表面化している。日本では緊縮財政と社会保険料増で家計負担が増大する一方、大企業は配当を拡大しながら投資や賃金を抑制し、国民の貧困化が進行した。(内田游雲)

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内田游雲(うちだ ゆううん)

ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)

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グローバリズム(globalism)とは、地球を一つの共同体と見なして、世界の一体化(グローバリゼーション)を進める思想を指す。

グローバリズム(globalism)の本質

言葉通りに訳すと「地球主義」のようにも思われ、あたかも理想的な理念のように聞こえる。しかし、実際には多国籍企業が国境を越えて活動しやすくなることで、市場寡占・独占化のリスクが高まり、一部の富裕層のみが莫大な利益を得る一方、多くの国民が貧困化するという問題がある。

さらに、グローバリズムが極端に進んだ「完全な自由競争」の世界では、政府の機能が形骸化し、富を握る一部の人間が暴力装置(軍事力)を雇うことで弱者を抑圧する“無政府主義的”な状態に陥る可能性すらある。

中国の習近平国家主席がダボス会議で「グローバリズム絶対支持」を表明した例を見ても、グローバリズムと独裁政治は権力と資本の集中という点で意外にも親和性が高いことがわかる。

「勝ち組」「負け組」の固定化

グローバリズムは「新自由主義」とも呼ばれ、「モノ・サービス・ヒト・カネ」の自由な移動を促す。

スタートラインが同じであっても、自由競争において一度「勝ち組」が生まれれば、そこにリソース(資金や人材)が集中するため、競争に負けた側との格差は拡大していく。

「利益最大化」を目的に人々が「自由」に行動する限り、勝ち組へのリソース投入はひたすら大きくなり、負け組は打ち捨てられ格差は拡大していく。

負け組は打ち捨てられ格差は拡大していく

国内の所得格差も同じで、勝ち組となった一部の人々は、政治力を高め、「勝ち組を有利にする政策」を政治家に推進させようとするだろう。

このように「自由」は魅力的な響きを持つ一方、結果的に「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」構造を生み出しやすい。こうした事態に対する反発として、イギリスのEU離脱(ブレグジット)やアメリカのトランプ現象などの「反グローバリズム」的動きが世界各地で活発化してきた。

グローバリズムがもたらす格差の実態

グローバリズムの推進により、国家間・地域間・企業間、さらには国民間の格差拡大が進んだ。例えば、過去30年間でアメリカのGDPは約4倍、株価は約10倍に上昇しているが、その富の大半を享受したのは1%の富裕層であり、残り99%の層の実質所得は停滞気味である。

2014年にはトマ・ピケティの『21世紀の資本』が世界的なベストセラーになり、「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」という現実が広く認知されるようになった。

日本の「失われた35年」と株主資本主義

日本では、この30年ほどで政府の経済政策が失敗を重ね、国民の購買力が削られてきた。

特に「社会保険料」の上昇が家計の可処分所得を圧迫し、1970年に25%だった国民負担率は、直近では50%近くにまで倍増している。

租税負担は大きく変わらないものの、社会保険料の負担だけが大幅に拡大してきたのだ。

同時に、日本政府は規制緩和や大企業優遇策を進める一方で、投資や賃上げを促す施策は不十分だった。その結果、売上や人件費は伸びないまま、経常利益や株主配当だけが拡大する「株主優先資本主義」が強まっていった。

第二次安倍政権以降、この傾向は一層加速し、大企業ですら生産性が伸びないまま「株主配当の最大化」を重視する体質が固定化している。

歴史的転換期と今後の課題

世界は、グローバリズムの行き詰まりと反グローバリズムの衝突によって、明らかな転換期を迎えている。しかしながら、資本主義という根本的な枠組みがすぐに変化するわけではないため、格差拡大の流れが一朝一夕に終わることは期待しにくい。

しかしながら資本主義の時代はまだ続いていく。反転を始めたからと行って、すぐに世の中が変わるものでもない。

まだまだ、
「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」
こうした世界は続いていくだろう。

だったら、私たちはこの資本主義の持つ力を、自分にとって有利になるように利用したほうが賢明と言えるのである。

結局のところ、自由競争に基づく資本主義を一気に変革することは難しい。
だからこそ、その仕組みを理解し、どう生き抜くかを模索し、自らや地域コミュニティを守りながらより良い社会を築くための「使いこなし方」を探ることが、これからの時代においてますます重要になっていくだろう。

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