好きな仕事で自我を手放し幸運を連鎖させるフロー経営の始め方

フローは夢中になって時間を忘れる集中状態

好きなことを仕事にすると、人は自然とフロー状態に入りやすくなる。フローとは、夢中になって時間を忘れるような集中状態であり、この状態では共時性(シンクロニシティ)が頻発し、ビジネスもうまく運ぶようになる。運のいい人は、直感や偶然を受け入れる柔軟な姿勢を持っており、内発的動機に従って行動しているのが特徴だ。しかし自我が肥大すると、フローも運も途切れてしまう。だからこそ、拡大ではなく成熟を目指し、経営者自身の人間性を磨くことが、スモールビジネスを幸運と成功に導く鍵となる。(内田游雲)

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内田游雲(うちだ ゆううん)

ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者(特にスモールビジネス)に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
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人間は好きなことなら時間を忘れて夢中になれる。それは年齢を重ねても変わらない。むしろ、50歳を超えた今だからこそ「本当に好きなこと」に向き合えるようになる。若い頃のように損得や世間体で動かなくなり、自分の内側の声に耳を傾けられるようになるからだ。

仕事が好きから始まるフロー状態

「好き」を仕事にすると、まず元気が湧く。無理して頑張らなくても自然とやる気が出る。やる気が出るからこそ集中できて、あっという間に時間が過ぎる。すると、次々にアイデアが湧いてくる。これがいわゆる「フロー状態」に入った瞬間である。

フローとは、心理学者チクセントミハイが提唱した概念で、自分の強みや興味を活かし、没頭することで得られる高い集中と幸福感のことだ。まさに、楽しくて仕方がない状態。やらなきゃいけない仕事ではなく、「やりたくてたまらないこと」に取り組んでいる時、人は自然とこの状態に入る。

このフロー状態に入っているとき、経営も不思議とスムーズに回り始める。商談が自然に決まり、人間関係もスムーズに流れ出す。予定していなかったチャンスが突然舞い込んできたり、まるでタイミングを見計らったかのように必要な人や情報が現れる。いわゆる「運がいい」と感じる瞬間だ。

だが、この「運の良さ」は偶然ではない。むしろ、好きなことをして自分の波長を整えているからこそ、物事の流れが合ってくるということ。ビジネスで成功している人の多くがこの状態を自然と経験している。そしてこの状態は、年齢や業種に関係なく、誰にでも訪れる。

「好きなことを仕事にするなんて甘い」と言われるかもしれないが、50歳を過ぎた経営者にとって、それこそが最も理にかなった選択肢である。なぜなら、今後の人生を自分らしく生きるためには、「好き」という感情を羅針盤にするのが一番正確だからだ。

幸運と不運を分けるフロー状態

世の中には、なぜかいつも運のいい人がいる。タイミングよく人と出会い、話がとんとん拍子に進み、まるで人生に追い風が吹いているかのようだ。一方、なぜか何をやってもうまくいかない、空回りしてばかりの人もいる。だがこの違いは、才能や努力の差ではない。実は「流れに乗れるかどうか」が分かれ目なのだ。

フロー状態に入っている人間は、自分の感覚に素直で、余計な力みがない。だから外の世界との呼吸が合いやすい。たとえば、「あの人に連絡してみようかな」とふと思って電話をかけたら、相手もちょうどこちらのことを考えていた、なんていう出来事が起こる。これは偶然に見えて、実は「共時性(シンクロニシティ)」というれっきとした現象である。

心理学者ユングはこの共時性を、「意味のある偶然の一致」と呼んだ。因果関係はないのに、意味を持つ出来事が同時に起こる。こうした出来事が頻発するのが、まさにフローに入っている状態だ。頭で計算しても導けない答えが、なぜかうまく整っていく。それを傍から見れば、「あの人は運がいい」と言われる。

幸運は流れを感じて身を任せられるかどうか

イギリスの大学が行った実験も興味深い。ふだん運が悪いと感じている人たちに、運のいい人の行動を1ヶ月間真似させてみたところ、なんと8割の人が「自分は幸運だ」と感じるようになったという。彼らが行ったのは、直感を信じる、新しい経験を受け入れる、良かったことを振り返る、自分を幸運な人間だとイメージする――たったそれだけだ。

つまり、幸運は天から降ってくるのを待つものではない。流れを感じて、それに身を任せられるかどうか。その力が、運を引き寄せる。スモールビジネス経営者にとって重要なのは、数字を追いかけることだけではない。風の向きを読むセンスを持ち、それに乗る感覚を養うことだ。

フローに入ると、その風が自然と吹いてくる。こちらが無理に動かずとも、向こうからチャンスがやってくるようになる。ビジネスに必要なのは、時に努力よりも“流れを読む力”なのだ。

共時性(シンクロニシティ)の正体

「そんな偶然ある?」という出来事が立て続けに起こるとき、人はこう思う。「もしかしてツイてるのか?」と。だが、フロー状態にある人にとって、それは偶然ではない。「共時性(シンクロニシティ)」という名の、流れのサインである。

共時性とは、ユングが名づけた現象で、「意味のある偶然の一致」を指す。たとえば、ふと頭に浮かんだ古い友人からその日に連絡が来る。必要な情報が、まるで準備されていたかのように目の前に現れる。こうした現象は、決して魔法でもオカルトでもなく、フロー状態に入った人間に自然と起こる「現実」なのだ。

この共時性がなぜ起こるのか。それは、意識と無意識が調和し、行動と直感が一致しているからだ。心が澄んでいて、やりたいこととやっていることがぴたりと合っていると、世界のリズムと自分のリズムが重なり始める。その結果、ズレなく物事が運び、「たまたま」が連発するように見える。

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これがビジネスで起これば、たとえば次の展開に悩んでいたら、ちょうど良い人材が現れる。新商品に迷っていたら、別の案件でヒントが飛び込んでくる。まさに流れに乗った証拠だ。この状態に入ると、意思決定も速く、判断にもブレがなくなる。経営のストレスは激減し、気がつけば売上や利益も後からついてくる。

もちろん、共時性は「引き寄せよう」として発動するものではない。追いかけるほど逃げるのが、共時性の面白いところだ。狙ってはいけない。ただ、自分の感覚に従い、自然に行動していればいい。そして、少しの偶然を見逃さず「これは意味があるかもしれない」と受け取れる余白を持つことが重要だ。

共時性は、心の姿勢によって起こる。合理的な説明や因果関係をすぐに求める人には、永遠にやってこない。逆に、「なんかいい感じ」と感じられる心の余裕があれば、運の扉は不意に開く。つまり、フローに入るとは、世界と調和すること。そして、共時性とは、その調和の証明書のようなものなのだ。

フローに入る内発的動機の力

好きなことをしていると、なぜかうまくいく。それは偶然ではなく、「内発的動機」が働いているからである。内発的動機とは、報酬や評価といった外部の刺激ではなく、自分の中から湧き上がる「やりたい」という衝動に突き動かされる状態を指す。実は、この内発的動機こそが、フロー状態の入り口なのだ。

反対に、外発的動機、たとえばお金、地位、他人からの賞賛などによって動くと、どんなに興味がある分野でもフローには入りにくくなる。面白い実験がある。被験者にパズルを解かせたところ、報酬を与えなければ休憩時間も熱中して続けていた。ところが、「1問につき1ドル出す」と告げると、皆そろって休憩時間にパズルをやめてしまった。楽しさが義務に変わると、自然な集中は消えてしまうのだ。

ビジネスも同じである。金になるからやる、競合に勝つためにやる、成功者に見られるためにやる――そんなモチベーションでは長続きしないし、何より楽しめない。楽しめないからこそ、流れも悪くなる。逆に、心から「これが好きだ」「これが楽しい」と思えることに取り組むと、不思議なくらい調子が良くなっていく。ここがフローの本質だ。

好きな仕事は報酬がなくてもやりたくなる

日本には「仕事の報酬は仕事である」という言葉がある。つまり、本当に好きな仕事は、報酬がなくてもやりたくなるし、やればやるほど自分の内側が満たされていく。そして、その満たされたエネルギーが外に漏れ出して、人を惹きつけ、運を引き寄せ、ビジネスを動かしていく。

50歳を過ぎた経営者にとって、今さら無理して嫌なことをする必要などない。むしろ、人生の後半戦だからこそ、内発的動機を羅針盤にした仕事の選び方が重要になる。好きなことに真っすぐ取り組み、流れの中に身を置く。その方が、よほど自然で、よほど強い。

フローとは、「やらされる」ではなく「やりたくて仕方がない」という状態。これをつくるには、外の声を消して、自分の声を聞くことだ。内側のエンジンで走るビジネスこそが、真に運のいい経営のカタチである。

自我の肥大がフローと幸運を壊す

フローに入って、共時性まで発動し始めると、人生もビジネスも順風満帆。ところが、この絶好調の波に水を差すのが「自我の肥大」である。つまり、調子に乗って「オレはすごい」と思い始めたとたん、流れがピタッと止まる。まるで天が「そこじゃない」と言ってるかのように、急にうまくいかなくなるのだ。

自我の肥大とは、自分の影響力や能力を過大に評価し、他人の意見が聞こえなくなり、自己中心的に物事を進めようとする状態である。「オレがやらなきゃ誰がやる」「すべては自分の手の中に」と思い込むことで、周囲との調和が崩れていく。これはまさに、フローとは真逆の精神状態である。

経営においても、この肥大した自我は致命的である。部下の意見を聞かず、すべてをトップダウンで決める。自分の思い通りに進まないとイライラし、結局すべてをコントロールしようとする。その結果、部下たちは顔色ばかりをうかがい、自由な発想も提案もなくなっていく。こうして、経営者の自我が、組織の流れを止めてしまうのだ。

もちろん、危機のときにリーダーシップを発揮するのは悪くない。緊急時にはワンマン的な判断が必要な局面もある。だが、常時それでは、組織が固まり、社内は沈滞していく。自我が強くなればなるほど、フローは逃げていく。なぜなら、フローは「自由で自然な状態」にしか宿らないからである。

逆に、自我が成長し、軽くなればなるほど、ビジネスは流れるように動き始める。自我を手放した経営者は、空気のように組織に溶け込む。トップが柔らかいと、部下も自由に動けて、風通しがよくなる。こうして、フローが組織全体に広がり、思わぬ成果が自然と生まれてくるようになる。

50歳を過ぎたら、拡大よりも調和。支配よりも流れ。肥大した自我ではなく、成熟した人間性でビジネスを動かす時代だ。フローを止めるのも、呼び戻すのも、自分自身の姿勢ひとつにかかっている。

社長の人間性がビジネスを決める

ビジネスを動かすのは戦略でもマーケティングでもない。もちろんそれらも重要ではあるが、最終的に成果を決めるのは「人間性」である。特にスモールビジネスにおいては、経営者の人間性がそのまま会社の空気になり、ブランドになり、そして「運の流れ」にすら直結する。

大企業では仕組みや資本が主役だが、小さな会社では経営者の在り方がすべてだ。好きなことに取り組み、強みを活かし、自然体で働くことができていれば、その姿勢はまわりにも伝わっていく。結果として、社員や顧客にも「この人と一緒にやりたい」という共鳴が生まれ、ビジネスの流れが良くなる。

これが「フロー経営」の本質だ。好きなことに没頭しながら仕事をしていると、まわりの人や出来事が不思議と噛み合い始める。必要なタイミングで必要な人に出会い、思ってもみなかったオファーが舞い込んでくる。私のクライアントにも、これまで縁のなかったメディアから取材依頼が来たり、夢だったプロジェクトが自然と始まったりというケースが何度もあった。

欲が顔を出し始めると流れはたちまち止まる

だが、せっかくフローに入った経営者が、状況の好転に浮かれた瞬間、過去のやり方に戻ってしまうことがある。「もっと儲けたい」「拡大したい」「一気に勝負をかけたい」といった欲が顔を出し始めると、流れはたちまち止まる。これは自我の逆流であり、せっかくのフローを台無しにする最大の罠である。

だからこそ、経営者に求められるのは「拡大」ではなく「深化」である。もっと大きく、ではなく、もっと自分らしく。自分本来の輝きを発し続けることが、ビジネスを流れに乗せる最大のコツだ。それには、まず自分自身が楽しんでいること、自分に正直であること、そして人間的に成熟していることが必要になる。

フロー状態とは、流れに乗っている状態。そして、その流れをつくり出すのは、あなた自身の在り方である。運を運ぶのもまた、人間性だ。気負わず、焦らず、流れに身をまかせながら、強みと喜びを活かしていく。それが、これからの時代の経営者に求められる生き方である。

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