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小さな会社の経営者が豊かになるためには、「資本主義者として生きているかどうか」が重要である。環境や職業、才能に左右されず、資本の活用が鍵を握る。お金を消費するのではなく、資本を増やす思考を持ち、投資と浪費を区別することが大切だ。また、「r>g」の原則を活かし、資本収益率を高める戦略を取ることで、会社の成長を加速させられる。世の中の99%の人が資本主義者として生きていない今こそ、少数派として資本を活かし、豊かな人生を築くべきである。(内田游雲)
profile:
内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
小さな会社を経営する多くの人は、
「どうすればもっと売上を伸ばし、豊かな人生を実現できるのか」
「お金持ちになる方法はどこにあるのか」
などと日々頭を悩ませる。
だが、そうした課題を真正面から考える前に、まず押さえておくべき大前提がある。
それは、
「自分たちが資本主義の世界でビジネスをしている」
という事実だ。
資本主義を理解する意義
資本主義では、資本を持つ者が優位に立つ傾向がある。
だからこそ、
「世の中の99%の人が資本主義者として生きていない」
という言葉が示す通り、多くの人がこのルールを意識せずに働いているため、自分の資本をうまく活かせずにいる。
たとえ小規模であっても、自社のリソースを“資本”と捉えて最大化すれば、驚くほどの成果を上げられる可能性がある。
「資本主義者として生きているかどうか」
が問われるのは、単にお金儲けの手段を考えるためではない。
自分の会社を発展させ、人々に価値を提供し、その対価として利益を得る。
この循環の中で資本を運用するという意識を持たなければ、どれほど優れた商品やサービスを扱っていても伸び悩むことになりやすい。
まずは
「資本主義のゲームのルールを知る」
ことが第一歩だ。
ルールを知らずに戦えば、やみくもに頑張っても空回りする。
逆に、ルールを理解し資本を巧みに使いこなせば、小さな会社でも十分に豊かさを築くことができる。
自分の才能や立地条件にとらわれる前に、
「資本主義とは何か」
をもう一度整理してみることが肝心だ。
豊かさは環境によって決まるのか
「地方だからチャンスが少ない」
「都心に出ないと儲からない」
など、環境要因を理由にあきらめてしまうケースは少なくない。
確かに、東京や大都市圏にビジネス拠点を構えた方が、有利な面があるのは事実だ。
取引先に恵まれやすいし、人口も多いので集客もしやすい。
しかし、それが「お金持ちになる方法」のすべてではない。
例えば、六本木や麻布にオフィスを構えたとしても、必ずしもそこで事業がうまくいくとは限らない。
固定費としての家賃が大きく経営を圧迫し、結果的に売上が家賃を補えないまま撤退を余儀なくされる企業も多い。
逆に地方の小さな町工場でも、世界に誇る技術を武器に安定した収益をあげている例もある。
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結局、地域や立地といった環境面は、ビジネスを加速させる一つの要素であっても、絶対条件ではない。
大事なのは、環境をどう活かすかという
「資本主義者としての発想」だ。
ネットの普及により、地方でもオンラインを使った販売チャネルを活用できるし、輸送インフラの整備によって遠隔地への商品提供も以前よりハードルが下がっている。
そして、たとえ恵まれた環境にあったとしても、そこに甘んじるだけでは本質的な豊かさにはつながらない。
重要なのは、ビジネスモデルをどう作り上げ、資本を回転させるかだ。
環境の良し悪しはあくまでスタートライン。
どこに拠点を置いていようが、資本主義のルールを理解し、自社の強みを展開できるかどうかが最終的な勝敗を分ける。
職業や倹約だけで豊かになれるか
「儲かる業種に乗り換えれば成功できる」
「倹約してお金を貯めれば豊かになれる」
そう考える人は多い。
確かに、需要が右肩上がりの業界でビジネスを始めれば、売上は伸びやすいかもしれない。
しかし、同じ業界でも成功する会社とそうでない会社が存在するのはなぜか。
そこには“資本を使う戦略”の違いがある。
小規模事業者にとって、無駄な支出を抑えることは大切だが、それだけに終始すると成長機会を逃すリスクもある。
たとえば、広告宣伝費をゼロにしていたら、新たな顧客獲得が難しくなる可能性が高い。
人材育成にお金をかけなければ、いつまでもオーナー一人で限界を抱えながら働き続けることになる。
もちろん、過剰な浪費は禁物だが、
「必要な投資」と「単なる浪費」
を区別する視点を持つことが肝要だ。
前者は将来的に利益を生み出す可能性が高いが、後者はただお金を減らしていくだけになる。
ここでも
「資本主義者として生きているかどうか」
が問われる。
支出をゼロにすれば安全、という発想ではなく、
「将来的に収益を増やすためにどこに資本を振り向けるべきか」
と考えるのが資本主義的なアプローチだ。
さらに、職業や業種自体も決定打ではない。
同じ業種でも経営者の意思決定や戦略次第で結果は大きく変わる。
飲食業やIT業界など、華やかなイメージのある分野であっても、続々と廃業する店や企業が後を絶たないのが現実だ。
「自分はどの業界でどう勝負するか」
「資本をどう回すか」
そこに思考を集中させることで、どんな業種でもチャンスを広げられる。
才能よりも資本の活用がカギ
「自分には才能がないから無理」
「頭がよくないから勝てない」
と嘆く経営者は少なくない。
だが、資本主義の面白いところは、天才や高学歴の人だけが成功する世界ではないことだ。
むしろ資本をうまく運用することで、才能の差を埋められる可能性があるのが資本主義の魅力とも言える。
ここで言う資本とは、お金だけを指すものではない。
会社が培ってきたノウハウ、人材ネットワーク、取引先との関係性、ブランド力など、あらゆる“資産的価値”が含まれる。
そして、これらをどう組み合わせ、どう増やしていくかが経営者の腕の見せ所だ。
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例えば、小回りの利く小規模企業は、大企業よりも素早く意思決定を下せることが多い。
これは大企業にはない強みであり、資本のひとつだと言える。
こうした“会社の強み”を資本として認識し、経営戦略に活かしていけば、凡人だろうと天才だろうと関係なく成果を出せる可能性が高まる。
もちろん、才能やセンスがあれば素早く結果を出せる場合もあるが、それがすべてではない。
どんな人でも資本主義のルールに沿って、自分の持つ資産を活かし続けることで、少しずつでも確実に豊かさに近づける。
重要なのは、目の前の限られた資源を
「どう資本化し、回転させるか」
を考える習慣だ。
資本主義者としての思考と実践
では、具体的に
「資本主義者として生きているかどうか」
を見直すにはどうすればいいのか。
大切なのは、
「消費者」から「資本家」
への意識転換だ。
世の中の99%の人が、働いたお金をそのまま生活費や趣味に消費しがちだが、経営者にとっては、それをいかに再投資に回すかが鍵になる。
例えば、売上の一部を広告宣伝費に回して新規顧客を獲得する。
あるいは、ITツール導入に資本を投じて業務効率を高める。
人材教育に力を入れれば、個々のスキルアップによって結果的に生産性が向上し、利益がさらに増える可能性がある。
こうした
「投資→利益→再投資」
のサイクルを回せるのが資本主義者ならではの発想だ。
ただし、個人の楽しみをすべて我慢すればいいわけでもない。
過度な節約はモチベーションを失わせるし、創造力も削ぎかねない。
大切なのは、ビジネスの成長や安定に直結する支出と、そうでない出費とをしっかり区別することだ。
前者は資本を増やす投資だが、後者はただの消費にとどまりやすい。
最初は難しく感じるかもしれないが、
「この支出は将来どんな利益を生み出すか?」
と常に問いかけるだけでも、経営者としての感覚は大きく変わってくる。
こうした習慣を身につけると、知らず知らずのうちに
「資本主義者の思考」
が根付き、あなたの会社は着実に力を蓄えていくだろう。
r>gを活かす99%がやらない習慣
最後に、資本主義の本質を表す有名な概念として「r>g」がある。
これは、フランスの経済学者トマ・ピケティが提唱したもので、「r」は資本収益率、「g」は経済成長率を指す。
一般的に
「資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも高い」
という傾向があるとされている。
この「r>g」こそ、資本を持つ者がより豊かになりやすい理由を示唆している。
経済全体がゆるやかに成長していても、資本を投じていれば、その成長率を上回るリターンが得られる可能性がある。
だからこそ、資本主義では資本を持ち、運用する立場にいることが大きなアドバンテージになる。
小さな会社の経営者も、この仕組みを意識するだけで大きな気づきを得られるはずだ。
では、具体的に「r>g」を自社で活かすにはどうすればいいのか。
ポイントは次の五つだ。
1.自社の資産を洗い出す
設備や知的財産、ブランド力、人脈など、形のあるものもないものも含めて列挙する。
どれがリターンを生むエンジンになり得るか見極める。
2.必要な投資をためらわない
例えば、新しい機械導入で生産性が上がり、収益が増す見込みがあるなら、それは“g”を超えるリターン(r)を期待できるチャンスかもしれない。
3.投資と浪費を区別する
ただ大金を使うのではなく、リターンを試算する習慣を持つ。
リスクは伴うが、それを恐れて何もしなければ“r>g”の恩恵を受けにくい。
4.資本の複利効果を意識する
利益を上げたらそのまま再投資し、さらに大きなリターンを狙う。
この回転速度が上がるほど、結果として豊かな人生に近づきやすい。
5.常に学び続ける
業界の動向や新技術、マーケティング手法をキャッチアップし、投資効率を高める。
小さな会社ほど機動力が高いので、学びの成果を素早く実践に移しやすい。
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こうした行動をとる人は決して多くはない。
だからこそ、
「世の中の99%の人が資本主義者として生きていない」
こうした状況が生まれる。
実際には大半の経営者が、日々の仕事や生活費に追われ、必要な投資をしないまま会社を維持し、結局“r>g”の力を活用できずに終わってしまう。
裏を返せば、小さな会社の経営者であっても、この「r>g」の理屈を理解し、資本を積極的に回していくことで、企業規模のわりに大きな利益を手にすることが可能になる。
自分の会社が持つあらゆる資産を見直し、そこから得られるリターンを増幅させる。
これこそが資本主義の醍醐味であり、実践することで
「お金持ちになる方法」
へと確実に近づけるはずだ。
環境や才能、職業だけを理由にあきらめるのではなく、
「資本主義者として生きているかどうか」
をもう一度問い直してみてほしい。
今ある資本をいかに回し、いかに再投資して成長エンジンを作るか。それを意識して行動するだけで、驚くほど状況は変化する。
小さな一歩でも「r>g」の世界へ飛び込めば、資本が味方になり、会社も個人も驚くほどの勢いで前進できるだろう。
「世の中の99%の人が資本主義者として生きていない」
こうした現状だからこそ、少数派としてこのチャンスを最大限に活かすべきだ。
それが、豊かな人生の扉を開く鍵となる。