
世の中の変化は絶えず起こり、そこにビジネスチャンスが生まれる。スマホの普及で消費行動は大きく変わり、今後はAIの波が中小企業にも及ぶ。経営者は過去の成功体験に固執せず、変化を前提とした計画を立てることが重要だ。スマホ対応やAI活用で売上や効率が向上する例も多い。センスがなくても、専門家や若手の力を借りて対応力を高めることは可能。50代以上の経営者こそ、豊富な経験を活かして「変化対応型経営」に舵を切るべきである。
(内田游雲)
内田游雲(うちだ ゆううん) ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者(特にスモールビジネス)に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
世の中の経営環境は常に移り変わる。とはいえ、50歳以上のスモールビジネス経営者のなかには、つい「昔のやり方」を優先したくなる方も多い。過去に培った経験や成功パターンは、確かに大切な財産だ。しかし、「昔はこうだった」「昔は良かった」という思考にしがみついていると、ふと気づいたときには市場の変化に取り残されているかもしれない。
「昔は良かった」の落とし穴
特に注意したいのは、「うちはまだ大丈夫」という根拠のない安心感だ。景気が悪くても、自分のところは顧客が離れていないから大丈夫と思い込むのは危険である。実際、世の中の環境は私たちの想像以上に速いペースで変わっていく。大きな変化だけではなく、小さな変化も絶え間なく起こっているのだ。その変化に気づいた人がビジネスチャンスをつかみ、知らず知らずのうちに業績を伸ばしている。
そこでまず試してほしいのが「自分の会社は取り残されていないか」を冷静にチェックすること。たとえば、この1年で顧客の購買行動や問い合わせ方法に変化はなかっただろうか。あるいは、新たな販売チャネルに挑戦できる余地があったのに、見て見ぬふりをしていなかっただろうか。昔うまくいったやり方を維持するだけでなく、今の世の中に合った新しいアプローチがないかを探してみる。これだけでも意外なほど視界が開けるものだ。
昔の成功体験が通用しないのは、別に個人の才能が衰えたわけではない。単に経営環境の前提条件がまるっと変わってしまっただけである。だからこそ、自社のビジネスを定期的に見直して、環境変化を前提にした経営計画を立てる必要があるのだ。
スマホが変えた儲けの常識
ここ数年で急速に広がったのがスマホの普及だ。いまさら言うまでもなく、電車内を見回せば多くの人がスマホを手にしているのが当たり前の光景になった。実際、ネット販売の85%以上がスマホやタブレットからの購入になっているというデータもある。私自身、売上分析をしていて、スマホ経由の注文が全体の87%近くにのぼっている事実に驚いた経験がある。
この「スマホシフト」が経営環境に与えた影響は甚大だ。消費者が「いつでもどこでも」商品やサービスを検索できるようになり、購買のタイミングや意思決定のスピードが格段に上がった。さらに、SNSなどを活用して情報を共有し合う動きも活発化している。その結果、店舗や会社側は「来店してもらう」「電話してもらう」だけを待っていては商機を逃してしまう時代になった。

一方、50歳以上の経営者からすると、「いまさらスマホ対応なんて難しそう」と尻込みしてしまうかもしれない。しかし、実は多くの中小企業が同じように「とりあえずホームページを作っただけ」で止まっている状況だ。だからこそ、ここに大きな伸びしろがある。スマホで使いやすく整えただけで売上がぐんと伸びる事例は珍しくない。
「スマホ対応って具体的に何をすればいいんだ?」と思うかもしれない。まずは自社のホームページをスマホで開き、読みやすさや操作のしやすさをチェックしてみてほしい。フォントの大きさや画像のレイアウト、ボタンの配置など、ちょっとしたデザインや導線の工夫で顧客の離脱を防げる場合が多い。つまり、スマホが変えた「儲けのルール」に乗り遅れないためには、自社サイトや商品情報をスマホでサクサク見られる状態に整えることが必須なのだ。
スマホ対応で売上を伸ばす具体策
では、実際にスマホ対応を進めるときの要点を確認してみよう。まず気にしたいのは「動線」である。消費者はスマホでサイトを見て、商品やサービスを比較し、気に入ればそのままポチッと注文する。つまり、スマホの画面上で完結できる仕組みを整えることがポイントになる。
たとえば自社サイトのトップページから商品ページ、そしてカート画面、決済画面へと移る流れはスムーズだろうか。1回1回読み込みに時間がかかったり、やたらと文字が小さかったりすると、せっかく興味を持ってくれたお客様も途中で離脱してしまう。今の時代、操作が面倒だとか、使いづらいと感じた瞬間に「もういいや」とページを閉じられてしまう可能性が高い。
そこで、自分のスマホを使って自社サイトをチェックしてみるといい。見るべき点は、表示が崩れていないか、ボタンがタップしやすいサイズか、決済のフローはわかりやすいか、などだ。もし「この画面、ちょっと使いにくいな」と感じる部分があれば、それはほぼ確実に顧客も不便に思っている。改善できるところをリストアップし、ひとつずつ手を入れていけば、売上が意外なほど上向くケースは多い。
さらに、中高年のお客様が対象の場合は、文字を大きめにしたり問い合わせ先を目立つ位置に置いたりするなど、相手目線の細かな配慮も不可欠だ。実はちょっとした調整で「見やすさ」が大幅に変わることを知っておくだけでも、競合との大きな差別化につながる。
すぐそこに迫り来るAIの衝撃
スマホ普及の次に来る大きな波が「AI革命」だといわれている。すでに大企業ではAIを活用した顧客対応や需要予測、在庫管理などが当たり前のように取り入れられつつある。中小企業やスモールビジネスでも、AIを使ったチャットボットで問い合わせ対応を効率化したり、SNSの書き込みを分析して新商品開発に役立てたりといった事例が増えてきた。
AIは「仕事を奪うもの」というネガティブなイメージを持たれがちだが、実際には使い方次第でむしろビジネスを拡大するチャンスでもある。たとえば、これまで人手不足で対応しきれなかった業務の一部をAIに任せることで、限られたスタッフがもっと付加価値の高い作業に集中できるようになる。

また、膨大なデータを解析するAIの力を借りれば、顧客のニーズを精緻に把握したり、新たなマーケットを開拓する糸口を見つけたりもしやすい。
ただし、AIを理解していない経営者が「どうせ自分には関係ない」と決めつけるのは危険だ。変化のスピードはスマホ普及以上に速そうである。ひとたびAIの波があなたの業種にまで及んだとき、そのとき初めて慌てても間に合わない場合が多い。常にアンテナを張り、世の中の動きをチェックする姿勢が大切になる。スモールビジネスであっても、AIを活用する選択肢を検討してみることは、今後の生存戦略として有効である。
変化を捉えるセンスの磨き方
「変化が大切なのはわかるが、自分にはそういうセンスがない」と感じる経営者もいるかもしれない。しかし、世の中の環境変化を捉えるのに「生まれつきの才能」は必須ではない。むしろ、日々の情報収集や観察力の積み重ねが「変化を見抜く力」を育てる。
たとえば、スマホ経由の売上が何%かを定期的にチェックし、前年や前月と比べてどのような変化があるかを記録する。あるいは、SNSや口コミサイトで自社の商品や競合他社の評判を調べてみる。こうした小さな取り組みを習慣化するだけで、顧客の移り変わりや消費トレンドの兆しに敏感になれる。
情報を収集する際は、テレビや新聞だけでなく、ネット上のニュースやSNSを活用すると幅広いデータを得られる。さらに、同業者や異業種の動向を毎月チェックするのもおすすめだ。実際、異業種の成功事例をヒントに、新しい商品やサービスが生まれることも少なくない。50代以上でも、スマホやAIなどの最新情報を軽やかに取り入れている経営者は存在する。それは特別なスキルの問題ではなく、意識してアンテナを張っているかどうかなのだ。
自分ひとりで限界を感じるなら、専門家や若手スタッフ、外部のコンサルタントからアイデアを積極的に取り入れるのも手だ。センスとは、必ずしもひとりで鍛え上げるものではない。周囲の知恵を借りながら、変化を捉える力を伸ばしていけばいい。
今こそ経営を変化対応型に
スマホやAIをはじめ、世の中の環境はこれからも目まぐるしく変わり続ける。だからこそ、経営を「変化対応型」にアップデートする必要がある。これはなにも大げさなことでなく、たとえば以下のようなステップを繰り返す仕組みづくりをイメージしてほしい。
1.環境変化のチェック
定期的に世の中の動向や顧客の声を調べる。スマホやAIなどのキーワードをニュースサイトやSNSでウォッチして、新たなトレンドが来ていないか確認する。
2.自社への影響を仮定する
「もしこの変化がうちの業界や顧客に波及したらどうなるか」をシミュレーションしてみる。楽観的な予測だけでなく、最悪のケースも想定しておく。
3.早めの対応策を検討する
スマホ対応が不十分ならすぐに強化する。AIが活用できそうなら、まずは簡易的なツールやサービスを試してみる。大がかりな導入をすぐにしなくても、情報収集や実験的な取り組みは早めに行うほうがリスクを減らせる。

特に50歳以上の経営者には豊富な経験と人脈がある。それは若い経営者にはない大きなアドバンテージだ。一方で、新しい技術やトレンドへのキャッチアップが遅れがちなのも事実だ。だからこそ、外部の専門家やコンサルタントと連携したり、若い世代のスタッフからアイデアを募ったりして、自社に最適な「変化対応型経営計画」を練り上げてほしい。
世の中の環境が変化すれば、そこにビジネスチャンスが生まれる。大小さまざまな波が押し寄せるたびに、「今回の変化を自分にとってどう活用できるか?」という視点で捉えることが重要だ。アンテナを張りめぐらし、環境変化を楽しむくらいの気持ちを持つと、不思議とチャンスは舞い込んでくる。AIも、上手に使いこなせば強力な味方になる。常に世の中の動きに敏感であり続ければ、50代以上のスモールビジネス経営者でも十分に勝ち残っていけるはずだ。