お客を増やしたい。これは、全ての経営者の切なる願いだ。商売の基本は、依怙贔屓(えこひいき)だ。これが集客の、一番大事な部分で、ここができないから商売が赤字になる。会社やお店のデータを見れば、実際にどの顧客が大事なのかが明確に見えてくる。見えてきたら、その重要な顧客をできる限り大事にして、依怙贔屓(えこひいき)をしていく。これこそが、集客の要になる部分だ。(内田游雲)
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内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
お客は3つの種類が存在する
お客を増やしたい。これは、全ての経営者の切なる願いだ。しかし、あなたはそのお客のことをどれだけ理解しているだろうか?
特に重要な事は、お客には、いくつかの種類があるということだ。これを理解していないと、集客で大きな間違いをしてしまうことになる。集客を考える上で、まずは、ここを最初に理解することだ。
まず、一般的にお客には、次の3つの種類がある。
(1)既存客
(2)休眠客(過去客)
(3)見込客
「既存客」とは、過去1年以内に、あなたのお店や会社を利用したお客だ。ここでは便宜上1年という区切りを設定するため、1年以上前に利用したお客は含まない。1年と1日でも含まれない。これは、あくまでも切り分けの便宜上だ。もし、お客の回転数が早い業種の場合には、6ヶ月で、切り分けてもかまわないのだが、決算はたいてい1年で切り分けているので、わかりやすく過去1年で分別する。
つまり、既存客とは、あなたの会社やお店の、今期のお客ということができる。この既存客が、私たちが通常使う「顧客」に該当する。
ちなみに、ここでは「お客」と「顧客」はしっかり区別して使っている。「顧客」とは、一度でも購入に至ったお客で、基本的には、顧客リストに掲載されているお客のことである。そして、それ以外はお客と表現している。
休眠客と見込客を知っておく
次に、あなたの会社には、この既存客以外にも顧客が存在する。それが、「休眠客(過去客)」といわれるお客たちだ。休眠客(過去客)とは、1年以上、あなたのお店や会社を利用していないお客のことだ。
この休眠客(過去客)には、前回利用してから、1年と1日しか、経過していないお客もいれば、創業日に来ただけで、もう30年以上利用していないお客まで含まれる。
つまり、あなたのお店や会社を過去に1度でも利用したことがあるお客であれば、「既存客」か「休眠客(過去客)」のどちらかとなる。
さらに、これ以外のお客もいる。それは、あなたのお店や会社を「利用したこと」が無いお客だ。これを「見込客」と呼ぶ。
まず、この3種類のお客がいることを整理しておくことが鍵になる。
売上は全て既存客がもたらす
さて、ここで重要なポイントがある。
以前下記の記事で説明した売上方程式
【売上=顧客数×購入回数×客単価】
この項目の顧客数はどれかということだ。
【参考記事】:
これは、誰でも判る通り、「既存客」のことだ。つまり、売上を上げる為には、「既存客」の数を増やさなければならないということになる。当たり前のように思えるが、この基本すら、多くの人が間違えるのだ。
例えば、SNSなどで「フォロワー」や「いいね」を増やすことは、どういうことだろうか。
これは、ただ「見込客」を増やしているだけにすぎない。だから、いくら「フォロワー」や「いいね」が増えたとしても、売上は1円も増えない。ここを間違えるので、SNSなどに一生懸命取り組んでも効果が出ないことになる。
同じように、チラシを1万枚撒いて10人から電話がかかってきたとしよう。これも同じように、「見込客」が増えただけなのだ。
売上を増やすには、「既存客」を増やす必要がある。つまり、「見込客」→「既存客」という活動を追加して、初めて売上が増えることになるのだ。
(1)既存客
(2)休眠客(過去客)
(3)見込客
だから、この3つのお客に来てもらうことが本当の集客の意味なのである。ここを間違えて、新しいお客、新しいお客と考えるから、いつまで経っても、顧客が増えないのだ。
さて、ここから、ものすごく大事な話をしていく。
では、この3つの顧客の貢献度はどうなのか?
ということだ。
言い換えればどのお客が一番大事なのかということだ。答えは、とても簡単で、最近お金払ってくれた既存客にきまっている。
このように、3つの種類の顧客を理解するだけで、何をしなければいけないかがが判ってくるだろう。売上を増やす為には、とにかく「既存客」を増やしていくしかないのだ。
既存客には4つの層が存在する
さらに詳しく見ていくと、この既存客が、以下の4種類に分けられることになる。
(1)ファン客(信者客):全体の10%
ファン客とは、あなたの会社・又は商品の信奉者である顧客のことだ。このお客は、平均的に見て全体のわずか10%しか存在しない。上得意客とかVIP客などと呼ばれることもある顧客だ。
この顧客をどうやって見分けるかは簡単で、顧客の年間売上ランキングを作ればいい。その上位10%がファン客ということになる。
もちろんこの数字は切り分け上の数字なので、実際には10%の一番下の人の売上金額を参考にして、大体の売上ラインを決めればOKである。そのラインを超えた顧客はファン客となる。
このファン客の下に「得意客」という層が存在する。
(2)得意客:全体の20%
得意客とは、あなたのお店や会社の商品を繰り返し購入してくれるお客様のうち、ファン客の下に続く顧客たちだ。この顧客は、全体の20%となる。
さらにその下に「浮遊客」という顧客が存在する。
(3)浮遊客:全体の30%
浮遊客というのは、まだ、あなたのお店や会社の評価が定まっておらず、なんとなく商品を購入してくれる顧客だ。
そして、さらにその下に「お試し客」という顧客がいます。
(4)お試し客:全体の40%
お試し客とは、とりあえず、興味を持って一回購入してくれた顧客だ。
ピラミッド型の既存客の階層
あなたの会社やお店の顧客が仮に1000人いたら、その顧客の売上ランキングを作った時に、
上から数えて、
1~100がファン客
101~300が得意客
301~600が浮遊客
601~1000がお試し客となる。
このように、顧客の売上ランキングを作成すると、上の層ほど人数が少なく、下に行くにつれて人数が多くなりピラミッドのような形となるはずだ。
さて、なぜこのような事をするのかというと、問題は、この各顧客層の売上高に占める割合なのだ。ファン客の人数は、全体のわずか10%にす過ぎない。しかし、このファン客全員の売上高の合計は、一般的に全売り上げの45%前後を占めている。つまり、売上の半分近くは10%のファン客層のみで占められているということだ。
次の得意客層は、全客数の20%になる。人数で言うと、ファン客層の2倍となる。では、この得意客層の売上がどれくらかというと、だいたい30%となる。つまり、ファン客層の売上よりも少ない。そうはいっても、全体から見れば、かなりの割合になる。ファン客層と得意客層の売上を合計すれば、全体の売上の75%を占める。
つまり、全体の割合の30%の顧客が、売り上げ全体の75%を占めているのだ。この数字の比率は、私がコンサルしていた会社の平均値だ。もちろん、多少の違いはあるだろうが、あなたの会社やお店も、概ね、これに近い数字が出るはずである。
まずは、自分のお店や会社のデータを解析してみて欲しい。そして、自分の会社やお店の顧客の売上ランキング表を作って計算すればいい。そうすれば、一部の少数の顧客が、あなたの会社やお店の売上の多くを占めている事実に気が付くはずだ。
ちゃんと依怙贔屓しているか
では、この客層の中の誰が大事だろうか?
そんなの当たり前だ。一番多くお金を払ってくれる顧客が大事にきまっている。
では、その顧客、ちゃんと大事にしているだろうか?
いつも来てくれているからといって、いい加減に扱っていないだろうか?
ここが、集客の基本である。
どうも、集客について、新しいお客を集めることだと思っている経営者がが多いのだが、それは間違いだ。集客とは、会社やお店に顧客に来てもらうことだ。では、誰に一番来て欲しいのかということだ。
そりゃあ、ファン客だろう!
そして次に、得意客。
ちゃんと、ここ理解しているだろうか?
ファン客や得意客は、お金たくさん使ってくれるから、もっと依怙贔屓(えこひいき)してあげて必要がある。ファン客を一人逃がしたら、死ぬほど痛手になる。
だったら、とことん大事にすることだ。
そして、浮遊客層や試用客層にアプローチして、早く、ファン客や得意客になってもらおう。これが集客の、一番大事な部分で、ここができないからビジネスが上手くいかないのだ。
商売の基本は、依怙贔屓(えこひいき)だ。まさか、ここまで読んできて、全ての顧客は平等だなって考えてはいないだろう。経営とは、沢山お金を使ってくれた人を、どれだけ大事にするかだ。
このファン客層と得意客層をしっかりと維持するだけで、約75%の売上が維持できる。では、反対に、この重要な客層の顧客に逃げられた時の衝撃はどれくらいになるかを、しっかり考えてみることだ。そしてこの重要な客層の顧客に対して、あなたは常にどのような対応を取っているだろうか?
会社やお店のデータを見れば、実際にどの顧客が大事なのかが明確に見えてくる。見えてきたら、その重要な顧客をできる限り大事にして、依怙贔屓(えこひいき)をしていく。これこそが、集客の要になる部分なのだ。
【参考記事】: