スモールビジネス経営者のための時間管理とタスク管理の基本

時間は最も価値が高く無駄遣いは利益を奪う

社長の時間は最も価値が高く、無駄遣いは利益を奪う。誰でもできる仕事に時間を割かず、社長にしかできない業務に集中すべきだ。計画と優先順位を決めることで、時間の浪費を防ぎ、生産性を向上させる。タスク管理を徹底し、自分がやるべき仕事を見極め、他人に任せるべき業務は委任する。時間管理には、日々の効率向上と目標達成の2種類があり、両方をバランスよく実践することが重要。習慣化することで長期的な成長につながり、社長の人生の質も向上する。(内田游雲)

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内田游雲(うちだ ゆううん)

ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者(特にスモールビジネス)に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
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世の中にあるもののうち、時間だけが二度と取り戻すことができない。お金なら、使ってしまっても新たに稼ぐことで取り戻せる可能性がある。しかし時間は、一度過ぎ去ればどうあがいても巻き戻せない。これは誰もがわかっているはずなのに、なぜか「嫌な仕事」を後回しにして「どうでもいい仕事」に逃げたり、やった気になれる作業に没頭してしまったりする。

時間だけは二度と取り戻せない

とりわけスモールビジネスの社長が費やす時間は、会社全体において最も価値が高い資源だ。社長の動きひとつが、そのまま事業の利益を左右するといっても過言ではない。それなのに、「言い訳」に走って優先順位の低い雑務に時間を割いたり、必要以上に長い準備ばかりに没頭したりしてはいないだろうか。

たとえば、新規顧客にアプローチする行動を先延ばしにし、そのかわり資料の装飾や会議室の予約などを妙に丁寧にやってしまうことがある。拒否や失敗への不安を避けるために、必要以上の下準備に走るのは珍しくない。でも、それでは本来取り組むべき核心の仕事がどんどん先送りになり、気づけば時間だけが容赦なく過ぎていく。

だからこそ「時間は二度と戻せない」という原点を、改めて肝に銘じることが重要だ。特に社長の時間は、誰でもできる業務に割くべきではない。自分にしかできない仕事にフォーカスする。これがスモールビジネスを軌道に乗せる最初の一歩となる。

社長の時間は最も価値が高い

社長が自ら手を動かしてしまう仕事の中には、実は「他の人でもできるタスク」が少なくない。それを社長自らが抱え込むことは、会社にとって大きな損失だ。なぜなら、社長ほどの高い判断力と責任感を要する仕事は、実のところ多くないからだ。

世の中には「社長がやるべきこと」と「誰でもできること」が存在する。日常的な書類作成やルーチン的な入力業務は、従業員や外部の協力者に任せても問題ないはずだ。仮に最初のうちは「人に任せるとコストがかかるのでは?」と感じることもあるだろう。だが、社長が浪費する時間のコストは、それ以上に大きい場合が多い。

社長の役割は決断や指揮系統の統括だけではない。事業の未来を構想し、新しいビジョンを打ち立てるのも社長にしかできない重要任務だ。つまり、自分ならではの強みを最大限に発揮できる領域を中心に行動し、それ以外は速やかに委任する勇気を持つべきである。

「そんなに簡単に任せられない」「自分がやったほうが早い」と思う気持ちは理解できる。しかし、長期的に見れば、社長が雑務にかかりきりになった時間は、会社全体の成長を妨げる。スモールビジネスでは特に、限られた人的リソースを有効活用するために、社長の時間をムダにしない工夫が必須だ。社長の時間を大切にすることが、結局は会社の利益につながり、ひいては自分自身の人生の質を高めることにもなる。

計画と優先順位がすべてを変える

「計画に時間をかけるなんて、今はそんなヒマはない!」と感じる人もいるかもしれない。だが、計画なしの行動はリスクが高く、結果的に時間を浪費する危険がある。「最初の1時間の計画が10時間近い無駄を省く」というのは、ビジネスの世界では珍しくない。

なにしろ行き当たりばったりでは、余計な作業やミスが生じやすい。あとになって「こんなはずじゃなかった」と手戻りするケースは、社長や従業員のモチベーションすら下げてしまう。だからこそ、まずは「自分がやるべき仕事」を洗い出し、優先順位をバシッと決める。これが時間管理とタスク管理の出発点である。

優先順位を定めるコツは、自分の事業における「最も重要な目標」を基準にすること。たとえば「新商品のリリース」「大口顧客のフォロー」「新規営業の強化」など、ビジネスの根幹となるアクションを一番上に置き、それに関連しない細かい作業はできるだけ下位に回すか、人に任せる。

嫌な仕事を先にやっつけるか、好きな仕事から始めるか――人によってやり方はさまざまだ。だが、いずれにしろ「何を最優先するか」を明確にしておかないと、どうでもいい仕事に流されてしまいやすい。せっかく立てた目標値に到達する前に、日常の雑務に忙殺されるのはもったいない。経営者の時間は、会社の利益に直接響く最重要資源だと認識すれば、計画や優先順位づけに手を抜くわけにはいかないはずだ。

タスク管理がなぜ必要なのか

タスク管理とは、日々の行動を一覧にして、やるべきことを確実にこなしていく技術を指す。具体的には、「今日やるべきこと」をすべて書き出し、それぞれの優先度を見極め、完了したらチェックを入れる。それだけで「今自分が何をすべきか」が一目瞭然になる。

このとき大事なのは、本当に「自分がやるべきこと」かどうかをしっかり見極めること。社長でなければできないタスク以外は、すべて他人に任せるのが理想だ。秘書やスタッフ、外部の専門家など、協力者をうまく活用することで、社長の負担が一気に減る。タスク管理は「自分で抱え込みすぎない」ための仕組みづくりでもある。

締め切り管理をしっかり行うことが成果を分ける

また、タスクを進める際には「締め切り」を意識するとスピードが上がる。締め切りがないタスクは後回しになりがちだが、日付や時刻が明確に決まっていれば、いやでも集中力が高まる。とくに社長の立場だと、細かい業務から重要タスクまで多岐にわたるため、締め切り管理をしっかり行うことが成果を分ける。

さらに、タスク管理をしていると、むやみに準備に時間をかけすぎている自分に気づくこともある。「資料をもっと丁寧に作り込まなきゃ」と考えているうちに何時間も経っていた、という失敗はよくある。タスク管理の視点で見ると、それが本当に必要な作業なのか、あるいは「リスクを避けるための言い訳作り」なのかが分かる。これがわかるだけでも、作業効率は大きく変わる。

時間管理で効率と目標を両立

世の中の時間管理には大きく分けてふたつの観点がある。一つは「日々のタスクを管理して、時間効率を上げる」時間管理。もう一つは「目標の数値を設定し、それを実現するまでのプロセスをコントロールする」時間管理だ。

前者は、日常的な生産性向上にフォーカスする。いかに段取りをスムーズにし、無駄な動きを省き、同じ時間でより多くの成果を出すかがポイントになる。これはスモールビジネスだけでなく、あらゆる職種に当てはまる基本の考え方だ。

一方、後者は「いかに大きな目標に到達するか」を視野に入れたマネジメントとなる。ここでは「今週・今月・今年」の行動計画を長期的視点で見据え、どのタイミングでどんなアクションを取れば目標値を達成できるかを逆算することになる。たとえば年商を何%アップさせるか、新規顧客を何件獲得するかといった指標を設定し、その実現に向けて必要なタスクを分解・配分するわけだ。

両方の時間管理がうまく回ると、日々のタスク効率が上がるだけでなく、長期的な目標達成にもブレがなくなる。社長としては、この二つをバランス良く組み合わせることが鍵だ。単なる効率化だけで満足してしまうと、最終的に「何をめざしていたのか」が見えなくなる。また、長期的なビジョンばかりに目を奪われ、日々の管理がおろそかになってしまうのも危険である。スモールビジネスを安定成長させるためには、効率と目標の両方を意識する必要がある。

時間管理を習慣化する

最後に、どれほど素晴らしい方法を学んでも、結局は「継続」しなければ効果は出ない。時間管理やタスク管理は一朝一夕で身につくものではないが、日常の習慣に落とし込めば、生産性の向上は確実に目に見えてくる。

たとえば毎朝10分、前日の反省と今日の優先順位確認に時間を取る。これだけで「計画があるのかないのか」の差が大きく開く。最初にしっかり計画を立てることで、あとの無駄が大幅に削減できるからだ。逆に、朝一番から何も考えずに動き始めると、気づけば「どうでもいい雑務」に追われて一日が終わってしまうこともある。

また、社員や外部スタッフにも「時間管理」の意識を共有すると、チーム全体の効率が高まる。社長だけが必死に時間を節約していても、周囲がダラダラしていては成果に限界がある。スモールビジネスならではの機動力を生かし、全員が「今、何が最優先か」を共有できる仕組みを作ることが大切だ。

時間管理やタスク管理を習慣化することで、会社の生産性が上がるだけでなく、社長自身のストレスも軽減される。スピーディに成果を出せるようになれば、より自由な時間を生み出せるし、事業拡大を志向しなくても安定した利益を確保することもできるかもしれない。長期目線で人生を経営する上でも、この「時間を無駄にしない」考え方は大きな武器となる。

最後に強調しておきたいのは、時間管理とタスク管理は「苦しい修行」ではなく、「より楽しく仕事をするためのコツ」だということだ。どうでもいい仕事に追われる毎日から抜け出し、自分にしかできない核心部分に注力する。そうすることで、仕事そのものを自分の得意分野に寄せ、より充実した経営者ライフを築くことができるはずだ。

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