宮本武蔵の『五輪書』の中に、観見の目という部分がある。経営を考えるときに、この観見の目がとても重要になる。経営の原則とは、まず、全体を見ながら、実際の行動は、小さいところをすばやく行うことだ。大局を見なければ、世の中で起きている流れが理解できずに経営は、困難を極めることになる。一方、大局ばかり見て、目の前の行動が伴わなければ、成果は上がっていかない。経営がうまく行っていないときには、このどちらかが欠けているか、そのバランスが崩れている。(内田游雲)
profile:内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。中小企業や個人事業等の小さな会社のコンサルティングを中心に行う。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的コンサルティングには定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めて経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「洩天機-運の研究」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
宮本武蔵の観見の目
宮本武蔵の『五輪書』の中に、観見の目という部分がある。
以下、簡単に引用する。
『五輪書』
水之巻 第三節 兵法の目付といふ事「眼の付け様は、大きに広く付るなり。
観見の二つあり、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、近き所を遠く見ること、兵法の専なり。敵の太刀を知り、聊いささかも敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事なり。
工夫あるべし。
此眼付、小さき兵法にも、大なる兵法にも同じ事なり。目の玉動かずして、両脇を見ること肝要なり。
か様のこと、急がしき時、俄にわきまへがたし。
此書付を覚え、常住此眼付になりて、何事にも眼付のかはらざる処、能々吟味有べきものなり。」(現代語訳)
「兵法には、敵に対して目付(めつけ)ということがある。
それは、視野を大きく広く見ることである。目付には、観(かん)と見(けん)の二つの目付がある。
観は心で見て、見は眼(まなこ)で見る事である。兵法では、心で察知するということを重要視して、実際に目で見ることはその次ぎにし、近いところも遠いところも同様に感じなくてはならない。
敵の太刀の振られようを察知し、それをいちいち見なくとも良いようにすることが重要だ。
工夫せよ。
この目付の重要さは一対一でも多数同志(あるいは一対多数)の戦いでも同様だ。
目玉を動かさないで両脇を見るようにせよ。
これは戦況がせわしくなると出来なくなる。
よってこの書き付けを覚えておいて、常にこの目付を取り、どんな状況でもそれを忘れてはならない。
よくよく吟味せよ。」
こう書いてある。
全体を見つつ小さい部分をすばやく行う
さて、これが何かと言うと、経営を考えるときに、この観見の目がとても重要になるということだ。
「観」というのは、心で見るとあるが、商売に置き換えてみれば、大局的に考えるということである。
つまり、
全体的・全面的に考える。
根本的・本質的に考える。
時間軸を中長期展望で考える。
これがまず基本に有る。
そして、「見」の部分。
これが、小さい戦略、素早い戦略、継続といった、実際の肉体の行動に当たる。
行動を迅速にすること。
プランを小さくすること。
一つ一つの努力を積み重ねること。
こうしたことに、つながっていく。
そして、この2つの見方を同時に持つことが重要であると、宮本武蔵は説いているのである。
経営の原則とは、まず、全体を見ながら、実際の行動は、小さいところをすばやく行うことだ。経営がうまく行っていないときには、このどちらかが欠けているか、そのバランスが崩れている。
大局を見なければ、世の中で起きている流れが理解できずに経営は、困難を極めることになる。
一方、大局ばかり見て、目の前の行動が伴わなければ、成果は上がっていかない。
目の前のことにばかり囚われてばかりいれば、会社は結局のところ袋小路に追い込まれていく。
経営者の基本であり経営の極意がこの「観見の目」なのである。