損得を優先させると、一時はうまくいくかのように見えるが、最後は、必ずしっぺ返しを受けることになるのだ。あなたのやっている仕事の存在意義とは、お客に幸福感という価値をもたらすことだ。その結果として利益が生まれるのであって逆ではない。利益を出そうと思うことはない。思うべきはどれだけお客の役に立つかということである。(内田游雲)
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内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。中小企業や個人事業等の小さな会社のコンサルティングを中心に行う。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的コンサルティングには定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めて経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
自分が喜び他人も喜ぶ
「損得より先に善悪を考えよう」
これは、倉本長治氏が昭和36年に発表した商売十訓の一番最初の項目である。
ビジネスをする人、これから、起業しようとする人は、ぜひ、これを心において欲しい。
しかし、これは、よく考えると結構難しい。
「損得」はまあ、なんとなくわかるにしても、では「善悪」とはなんなのか?
これは、もう、哲学の命題である。
さて、ここでは、私の考えている「善悪」の定義、まあ、それほど大上段なものではないので「いいこと」と「悪いこと」という言葉が近いのだが、そんな考えを伝えることにする。
まず、「いいこと」とは、「自分が喜び、他人も喜ぶ」。
そして、「後悔しない」ことである。
では、反対の「悪いこと」とは、「自分が苦しみ。他人も苦しむ」。
そして、「後悔すること」だ。
だから、自分には喜びであっても、他人に迷惑をかけるのは、いいことではない。
また他人には、喜びであっても自分が苦しむのも、いいことではない。
このように、判断基準を自分の心のなかに置くのである。
つまり「いいこと」と「悪いこと」を決めているのは自分の心だということだ。
そして、これによってすべての行動は、「いいこと」と「悪いこと」だけではなく、「いいことではない」と「悪いことではない」という、4つに分類されることになる。
こうすることによって、社会環境や、置かれた状況による善悪のブレからは逃れることができる。
しかし、その分だけ、自分を見つめるという作業が必要になる。
生きていく上で、全ての人間は選択を迫られる。
そのときに、少しでも「いいこと」に近い選択をするように選択をしていくことが重要なのだ。
これを、ビジネスの上での重要な項目として上げたのが「損得より先に善悪を考えよう」という言葉なのである。
知らないうちに心の癖となる
そして、これを読んだあなたには、「悪いことは、どんな小さなことでもしてはいけない」と、ぜひ、心に決めて欲しいのだ。
「小さなことだから。たった一回だから」となると、心がどんどんと麻痺していくからだ。
「千円くらいどうってことはない」とごまかし続ける人は、最終的には何千万円のごまかしもするようになる。
小さな嘘をつく人は、やがていつも平気で嘘をつくようになってしまうのである。
恐ろしいことは、それが心の癖になってしまうことだ。
一度癖になってしまったら、元に戻すのが大変である。
そして、知らず知らずの内に損得が判断の基準になっていく。
「利を見てその真を忘れる」
(荘子)
とあるように、目前の損得だけを考えて周りを見ないと自分が置かれている本当の立場が判らなくなってくる。
損得を優先させると、一時はうまくいくかのように見えるが、最後は、必ずしっぺ返しを受けることになるのだ。
あたかも、神が罰を与えるかのようにかえって酷い目に合わされるものである。
ビジネスをやっていると、つい利益に目がいってしまう。
もちろん、利益がなければ食べていけないのだから、利益はとても大事なことだ。
しかし、ここに目が行きすぎると、どうしても歪が生まれてきてしまうのだ。
幸福感という価値を提供する
そもそも、あなたのやっている仕事の存在意義とは、お客に幸福感という価値をもたらすことだ。
その結果として利益が生まれるのであって反対ではない。
しかし、経営者はどうしてもまず利益に目がいく。
私もついついそうなってしまうのだが、ここが間違うところである。
利益を出そうと思うことはない。
思うべきはどれだけお客の役に立ったかということである。
ただ、この一点のみなのだ。
お客は、買い物を通じてあなたの人間としての美しさを常に求めている。
「損得より先に善悪を考えよう」
私は、いつもこの言葉を部屋の壁に貼ってある。
そうしないと、つい損得勘定が優先してしまうからだ。