売れない理由はセールスではなくマーケティング不足

小さな会社はマーケティングに注力する

スモールビジネスが成功するには、マーケティングとセールスを明確に区別し、特にマーケティングに注力する必要がある。見込客を集め、欲求に気づかせ、商品を自然に手渡す仕組みをつくることが鍵であり、これができれば売り込みは不要となる。大企業を真似るのではなく、機動力と独自戦略で勝負するべきだ。無料集客や口コミ、関係性の構築など地道な実践が結果を生む。(内田游雲)

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内田游雲(うちだ ゆううん)

ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者(特にスモールビジネス)に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
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マーケティングとセールスの違いが曖昧な会社は、ハンドルとブレーキを間違えて握るドライバーのように危険だ。マーケティングとは「買いたい」と思う客を目の前に連れてくる仕組みづくりであり、セールスとはその客に最適な商品を静かに差し出す行為に過ぎない。

マーケティングとセールスの核心

多くの経営者が「売れない」と嘆くが、じつは見込客のいない荒野で必死に叫んでいるだけだ。ビジネスはマーケティングが九割、セールスが一割――この黄金比を理解すれば、注ぐべきエネルギーが一気に絞れる。

まず見込客を集め、話を聞いてもらえる状態を整え、気づかない欲求を言語化し、解決策として商品と購入方法を提示する。ここまでの一連の流れがマーケティングであり、セールスは最後に「どうぞ」と手渡すだけだ。苦しい売り込みを卒業し、舞台を整えて拍手をもらう劇団のように、セールスは自然に成立する。
九割の準備を怠れば、一割の努力はむなしく散る。まずは言葉の定義を明確にし、ハンドルとブレーキを正しく握るところから経営は始まる。

そして50歳からの挑戦でも遅くはない。人生経験で鍛えた観察眼は、見込客の微細なサインを捉えるレーダーになる。マーケティングの本質を理解すれば、看板より先に道案内、口上より先に客席という原則が体に染み込む。整った舞台の上では、セールスは握手と笑顔だけで完了する。

マーケティング徹底で売込み不要

マーケティングを徹底するとセールスは不要になる。この一文に眉をひそめる人ほど、仕組み化の可能性に気づいていない。顧客の欲求を喚起し、その解決策として商品を提示し、購入の障壁を取り除くまでがマーケティングだ。満席のレストランに憧れる心理を自社で再現できれば、売り込みは姿を消す。

機能ではなく未来を語り、問題ではなく解決後の姿を見せる。見込客が自ら財布を開く状況を演出することで、営業トークは確認と感謝だけに縮む。鍵は自動化と測定。ウェブサイト、SNS、紹介制度、地域イベント・・・。
どのルートが成約へつながるかを数字で追い、効果の高い道を拡幅する。問い合わせ件数、商談率、成約率を計測し、ボトルネックを絞ればマーケティングは自走を始める。

マーケティングの徹底はセールス不要の魔法

電話帳片手の飛び込みは過去の遺物だ。今や見込客がスマホ越しに扉を開け、商品名を呼びながら入ってくる仕掛けを整えるだけでいい。
どの順番で客が情報に触れ、購入を決めたかを手書きでも一覧化すれば仮説が浮かぶ。説得をやめ、背中をそっと押す一文。「その悩み、今すぐ解決できます」。これがマーケティング徹底の本質であり、セールス不要の魔法だ。

最終的に残るのは「ようこそ、こちらへどうぞ」と案内する役目だけ。60歳でも70歳でも、笑顔と椅子があれば一流の営業部隊を名乗れる。

スモールビジネスは独自戦略

スモールビジネス会社に必要なのは独自戦略だ。大企業の背中を追っても資金力と人海戦術の差で窒息する。ネズミがゾウと相撲を取らないように、弱者には弱者の勝ち筋がある。
歴史はゲリラ戦の勝利例で満ちている。鍵は神出鬼没と機動性だ。商品の回転速度、意思決定の速さ、地域密着の濃さを武器に戦う。資金力不足は献身的な顧客理解で補い、大量広告の代わりにパーソナルストーリーで心を射抜く。これこそ独自性という鎧だ。
小ささは品質管理の徹底を可能にする。同じラーメンでも店主が毎日味を調える店は、フランチャイズより深い物語を持つ。その物語がマーケティングに乗ると、ファンは自ら拡散しゲリラ戦が完成する。

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数字を見るときは売上より「小回りの利く領域」を探し、そこに集中砲火を浴びせる。弱点を嘆くのではなく、弱点を反転させる思考が50歳からのビジネスを救う。
独自戦略の手順はシンプルだ。競合が見落とすニッチを発見し、熱烈なファンを作り、ファンと共に商品を磨き、物語と成果を共有する。無料調査、カフェ聞き取り、SNS分析・・・。身体一つで始められる。
大企業が入れない細い路地に入り込み、表札代わりにストーリーを掲げれば顧客は探検気分で曲がり、驚きと共感が交差する。その瞬間、弱者の戦略は勝利へ変わる。

誤った手法は数値を確認して直す

間違いだらけのマーケティング手法は会社を静かに蝕む。うまくいかない理由の大半は「誰に何を届けるか」のズレにある。広告費を湯水のように流しても届け先が曖昧なら砂漠に水を撒くのと同じだ。理想客を一人の人格として描き、その人がスマホを触る時間帯にメッセージを合わせる。ターゲティングを正せば広告費は半分でも反応率は倍になる。

次に「超ニッチ」戦術を採る。十人しか検索しないが十人が必ず買う言葉を拾う。小さな会社はそこで王様になればいい。クリック率、成約率、リピート率を毎月記録し、最も低い数字から改善する。数字は嘘をつかない優秀なコーチであり、感情に流されがちな経営者を正しい道へ導く。

間違いは「測って、直して、また測る」

好意的レビューも辛辣なクレームも宝の山として拾い、商品とメッセージのズレを修正する。五十歳を超えた経営者が「数字は苦手」と肩を落とす必要はない。紙と鉛筆、電卓だけでも十分だ。

一日10分でアクセスと売上をノートに写し、矢印で原因と結果を結ぶ。それだけで脳は新しい仮説を生み翌日の行動が変わる。間違いを一つ放置すると損失も雪だるまになる。だからこそ「測って、直して、また測る」を口癖にする。今日から鏡の前で唱え、数字と向き合う習慣を始めよう。それが誤った手法を最短で修正する秘密兵器になる。

実践的マーケティングで地元制覇

実践的なマーケティングはお金をかけずに見込客を集める工夫から始まる。王道は情報発信だ。ブログやSNSで「悩み→気づき→解決策→行動」をテンポ良く綴り、読者が頷いた瞬間に次の一手を提示する。

地域密着型では商圏三キロを宝の山と見立てる。街の掲示板、地元紙、商店街イベントは大企業が見向きもしない金脈だ。看板より親しみやすい顔と会話が最強の集客装置になる。

紹介と口コミを最大化するには驚きと共感の仕掛けが要る。手書きのお礼状、誕生日の一本の電話。それだけで顧客は「誰かに話したいスイッチ」を押される。紹介カードや二人来店で割引など小さなインセンティブも効果的だ。

関係性を深める継続マーケティングでは感謝の定期便を送り続ける。月一ニュースレター、季節の挨拶、使いこなし動画・・・。「あなたを忘れていない」と伝えるサインになる。関係性が育てばリピートは自然に増え、広告費ゼロでも売上が伸びる。無理のない頻度と自分の言葉で続けることが肝要だ。

カレンダーに印をつけ締切効果で習慣化しよう。無料だからこそ大胆に試し、数字が語る手応えを見て継続を判断する。気負わず軽やかに、しかし粘り強く。小さな会社の武器はフットワークと人間味だ。今日配ったチラシ一枚が半年後に熱烈なファンを連れて来る。そんなドラマを信じて実践を続けよう。

マーケティングを学び習慣化する

50歳からのマーケティング学習は詰め込みより小さな気づきメモが要る。今日読んだ広告から「心を動かされた一文」を書き写し、その理由を十秒で考えるだけでコピーライターの視点が育つ。

一次情報を扱うメルマガやポッドキャストなどを三つに絞り、情報過多を防ぐ。学んだ内容はすぐ自社メディアで試す。結果が数字で返るので理解が定着する。
習慣化のコツは毎日十五分と時間を区切ること。朝のコーヒーが冷める前に広告を読む、昼休みにSNS反応をチェック、就寝前にニュースレターを要約する。点在する短時間が線となり、線が面となって知識地図が広がる。

習慣を資産に変えセールス不要の未来を設計する

月一で振り返り、改善策を翌月の目標に組み込めばマーケティング筋肉は太くなる。数独を解く感覚で仮説を置き、結果を検証する。その繰り返しが脳を活性化しビジネスを長寿に導く。

「もう歳だから」と言い訳する間にライバルはページを更新する。経験値と好奇心を掛け算し、今日も15分の投資を続けよう。学習は孤独な作業だけではない。

同年代の経営仲間と情報交換会を開く、若いスタッフに最新アプリを教わる、顧客に新サービスの感想を尋ねる・・・。学びは人を介して深まる。
交流の場に身を置けば15分の知識が数時間分のヒントへ化ける。学びを習慣に、習慣を資産に変え、セールス不要の未来を自ら設計しよう。

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