ビジネスで利益を出していく為には、商品をいかにして、売り手市場で売っていくのかにかかっている。売り手市場を創り出す為には、4つの方法が存在する。この4つを同時に追求することも資本があれば可能になるが、資本の無い小さな会社にとっては、どれか一つしか選べないという現実がある。そのため、力を注ぐべき場所を選ぶ必要があるのだ。(内田游雲)
profile:
内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
ビジネスで利益を出していく為には、自分の商品をいかにして、売り手市場で売っていくのかにかかっている。
売り手市場でビジネスをする
売り手市場とは、買い手の数が売り手より多い状況のことだ。つまり、需要のほうが供給より多い状態ということである。ビジネスで利益を出すために、やらなければいけない最も大事なことがこれである。
利益を出すためには、いかにして、売り手市場を作り出せるかを常に、追及していくことだ。こうした状況を創り出すこができれば、確実に利益を出すことができるのである。
さて、この売り手市場を創り出す為には、4つの方法が存在する。
(1)イノベーションを起こす
これは、どこにも売っていないような、斬新で目新しい商品を創り出すことだ。売り手はあなたしかおらず、それを求めるニッチな市場が存在すれば、一人の供給者に対して、多くの買い手が存在する状況が作り出されることになる。
市場にまだない、しかも、市場が求めるような新しいものを作るのは、売り手市場にする方法の一つである。これが、世界規模のイノベーションであれば、appleのような会社にすることも夢ではない。しかし、そこまでのイノベーションでなくてもかまわない。
例えば、映画を例にとってみると、年間の興行収入の上位は、必ず新作映画である。どんなに、歴史的な名画であったとしても、新しい駄作には絶対にかなわないのだ。たとえ駄作であったとしても、人は未知の体験が大好きである。だから、イノベーションは、ちょっとしたものでも、かまわないのだ。
いくつかの製品や、サービスを組み合わせたものでも構わない。別の市場から持ち込んだ、目新しく見えるだけのものでもOKである。これまである商品に、新しい特徴を加えることでもイノベーションは起こせる。
このようなイノベーションには、商品そのもの、システム、ブランドのそれぞれの場面で考えることができる。
商品であれば、誰も見たことのない商品を開発するか、既存の商品を今までない方法で改良する。appleがこの成功例だ。システムであれば、既存の商品を、より早く、確実に提供するといったことだ。Amazonがこの成功例である。ブランドであれば、ありきたりなもののイメージを刷新して、魅力的に見せて売り出していく。多くのファッションブランドがこれだ。
こうしたイノベーションは、当たれば世界的な企業にまで成長していく。しかし、イノベーションには、アイディアとそれを実現する資本が必要になる。
市場からいかにして資金を調達するか?
そうした能力も別に求められることになる。
資本が無い時には、結局アイディアを実現できずに終わる例が多くあるので、ここは、注意が必要だ。
(2)顧客と人間関係を構築する
あなたが、買い手と深く強い結びつきを築くことで、買い手は、他の売り手に見向きもしなくなる。つまり、あなたの言うことしか聞かなくなる。
このまま、買い手が他の売り手に関心を示さなければ、売り手市場となっていく。あなたと特別な関係を築いていれば、顧客は他の商品や会社に目が行かなくなります。
特に、その分野の大御所と呼ばれる存在になれば、周りは、まずあなたのアドバイスを聞きに来て、他を探し回ったりしなくなるのだ。誰でも、専門家として認知している相手のアドバイスを欲しがる。それは、グルメ情報であっても投資情報であっても同じである。
さらに、特別な関係を作るには、
「とりあえず契約を結んでしまう」
という手段もある。
たとえば、初めて携帯電話のキャリアを選ぶ時、docomoがいいのか、auがいいのか、はたまた、softbankがいいのか?
あなたは、おそらく、何時間も比べて悩んだのではないだろうか?
しかし、いったん契約した後は、こうした悩みは雲散霧消して、他社のCMもあまり気にならなくなる。これなどが典型的な例で、人間は、誰もが変化することに抵抗する傾向がある。だから、一度契約を結んでしまえば、他者に移りにくくなるのだ。
このように顧客と特別な関係を築くことは、資本の無い小さな会社にとって、最も重要な戦略となる。
(3)利便性を追求する
利便性とは、買い手の負担が最も少ない形で、買い手のニーズに応えることだ。つまり、適切な場所で、適切な時に、消費者の欲求を満たす何かを提示し、簡単に手に入るようにする。そうすることで、買い手は時間、金、エネルギーを余分に費やして別の商品を探そうとはしなくなるのだ。
商品を購入するということは、買う側にとって、時間やめんどくさいといった「壁」がある。たとえば、店が遠いとか、商品がよくわかないとか、手に入れるのに時間がかかったりといった「壁」があると、お客は次第に遠ざかっていく。こうした、「壁」を減らすことができれば、多くの顧客を獲得できる。
これが、利便性をウリにするということだ。
この方法で、お客の心を掴むには、購入までの手順を簡略化したり、迅速化する方法を見つけ出し、提供すればいいのである。よそよりも、手軽だからという理由は購入を決める大きなアドバンテージになる。アマゾンなどは、ここを追求して、市場を席巻している。
アマゾンが取った戦略が、ネットを使って情報を入手しやすくし、注文を簡単にし、宅配便の普及で手元にすぐに届くようにしたのだ。アマゾンは、安いから売れるのではなく、便利だから売れていくのである。
ただ、この方法は、スグ他の店で真似されるので、優位性はすぐに埋められる可能性がある。そのため、どうすれば真似できなくするか、真似されたら、さらに上に行くかを常に意識しておく必要がある。
(4)価格を安くする
最もわかりやすいのが価格を安くすることだ。他者より安い価格で商品を提供すれば、買い手はあなたから買うようになる。つまり、価格で競争していくということだ。
商品が同じ、利便性が同じで有れば、勝負するのは、価格しかない。ただし、その為には、設備投資などをして、他社よりコストを下げることができなければ、利益が出なくなり潰れるだけである。
価格を下げるのは、一番わかりやすい方法だ。生産コストを下げ、利益を確保しつつ他のお店よりも安い価格を提示すればいい。
この方法は、以前は大企業が圧倒的に有利であった。それは、工場や設備に投資をする
体力があったからです。しかし、今の日本では、大企業がこうした設備投資をしたがらないので、中国の企業に席巻されている。
ところがここへきて、シェアリングが広がって来て、必要な時に、大半の工場や設備を借りられるようになり、低コストで利用できる状況が出現している。
小さいからと言って、価格競争に勝てないわけでは無くなってきているので、工夫次第では、価格競争に挑むこともできるようになった。しかし、そこは、どこまで行っても、激烈な消耗戦であることは否めない。
それぞれの対立軸を知っておく
ここまでの4つが、売り手市場にする方法である。
(1)イノベーションを起こす。
(2)人間関係を構築する
(3)利便性を追求する
(4)価格を安くする
この4つである。
さて、これらをよくみてみると、この4つの要素は、2つの対立軸に分けられる事に気づく。
たとえば、イノベーションと利便性は基本的に両立できない。イノベーションには、時間がかかることと、最初のアイディアは、欠陥があるからだ。たいていの商品は、イノベーションを改善して利便性を追求していく流れになる。
また、激安価格で提供しながら、顧客との関係性に優位に立つのも難しいだろう。関係性構築には、それなりのコストがかかる。
この4つを同時に追求することも資本があれば可能になるが、資本の無い小さな会社にとっては、この4つの方法のうち、どれか一つしか選べないという現実がある。
そのため、どこで、自分の地位を築きたいのか、力を注ぐべき場所を選ぶ必要があるのだ。
あなたのビジネスは、
何で優位性を持ち、
売り手市場を作っていくのか?
これを明確にすることで、経営戦略の基本の部分が見えてくる。
まずは、あなたのビジネスの基本をどこに取るかをしっかりと考えてみることである。