品揃えや低価格ではお客は動かない

ここ10数年で大きく変わったお客の購買行動がある。それが「選買分離」だ。「選買分離」とは、お客が商品を買う場合に商品を選定することと、実際に買うという行動が時間的に分離してしまっているということだ。だから、お店に来てくれたお客に対して、店頭にある商品を一生懸命勧めたとしても、まず、購入してくれない。なぜなら、そのお客は、すでに買うものを決めているからだ。その上、日本で一番安く手に入る方法をお客は知っているのだ。(内田游雲)

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内田游雲(うちだ ゆううん)

ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングや人生のコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めて経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)

選買分離という購買行動

経営を考える時の基本は、まず、お客を数字の上で考えて見ることである。これには間違いはない。しかし、一生懸命勉強して、こうした数字が理解できれば、すぐにでも売上が上がっていきそうだが、事はそう簡単ではない。

実際には顧客は一人の人間であって、その心理や行動を理解する必要があるからだ。数字を勉強するだけではなく、顧客の心理や行動についての基本的な知識を持つことが必要になる。

さて、ここ10数年で大きく変わったお客の購買行動がある。それが、「選買分離」ということだ。「選買分離」とは、顧客が商品を買う場合に商品を選定することと、実際に買うという行動が時間的に分離してしまったということである。

商品選定と買うという行動が分離した

たとえば、あなたがテレビを買おうとする。そうすると、まず何をするだろうか?
たいていの人が最初にすることはネットを使って、どのテレビがいいかを調べることから始めるだろう。

大きさはどれくらいがいいのか?
メーカーはどこがいいのか?
性能はどこまで必要なのか?
価格はどれくらいなのか?

このように、性能や価格を比べた上で、どのメーカーのどの商品を買うかをまず最初にだいたい決めるのである。そして、その検索した情報でほぼ購入する機種や価格までを決めて、その上で、商品を売っている店に見に行くのだ。

昔と今の購買行動の違い

昔は、テレビが欲しいと思ったら、まずデパート、あるいは電気屋に行って、そこで、いろいろな商品を見比べて気に入った商品を購入していた。それが今では、店に出かける時には、既にどんな商品を買うかが決まった状態で出かけていくということだ。

一見当たり前のように起きているこの、「選買分離」という現象。20年ほど前は、この商品を調べるのがカタログだったのだが、今はインターネットで数分で調べることができてしまうようになった。さらに、評判や口コミ、最低価格なども調べられる。

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だから、もうお客が店に入った時点では何を買うかが決まってしまっているのだ。あとは、それをどこで買えばいいのかだけという状態である。

しかし、この時点で、あなたの会社やお店がこの商品を扱っていなければ、いくら、頑張って日頃から宣伝しても結局は、お店に来てくれないということになる。どれだけ地域という商圏に密着して宣伝広告を頑張っても効果が出ないということになる。

価格や品揃えで集客できない

お店に来てくれたお客に対して、店頭にある商品を一生懸命勧めたとしても、まず、購入してくれない。なぜなら、そのお客は、すでに買うものを決めているからだ。

その上、日本で一番安く手に入る方法をお客は知っている。品揃えや価格で勝負する店は、もはや成り立たなくなってしまったのだ。これでは、大手の家電量販店の業績が低迷するのも当たり前なのである。

倉庫だけの通販店に勝てるはずがない)

品揃えならAmazonや楽天には絶対に勝てない。価格もギリギリまでコストダウンしている。そもそも倉庫だけの通販店にお店は勝てる訳がないのだ。店舗を持った時点で、もはやコスト高になり、お客に選ばれなくなるのである。

つまり、品揃えや価格といった魅力で売っている会社や店は、差別化できなくなっていて不振に陥らざるを得ないのが現代の流れである。

この結果、地域戦略があまり有効ではなくなってきた。どれだけ、地域に絞って広告費をかけて宣伝したとしても、品揃えや価格ではお客は動かないのだ。

地域密着から顧客密着へ

それよりも、日頃から顧客に密着して個々のニーズを汲み上げて、それを提供するほうが理にかなっている。

これはつまり、「地域密着」から「顧客密着」にマーケット戦略が変化したということである。だから、もはや地域密着だけで頑張るという考え方はマーケティング的に、あまり成立しなくなってしまったのだ。

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商品の魅力や価格をどれだけ宣伝しても、もはや購買行動には結びつかない。これからは、個々のお客の欲求と行動を理解することが重要になり、それぞれのお客のニーズに合わせた商品やサービスが必要とされる。

これが今の流れである。
その為には、もっともっと、お客のことを理解し、ニーズや心理状態を想像し、それに対応する必要があるということだ。

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