
スモールビジネスの最大の強みは、社長自身が顧客の最も近くにいること。50代からの経営では、勉強熱心さと人間性が特に重要だ。資金や人材が限られる中で、社長は「経営計画、マーケティング、セールス、経理、ぜーんぶやらなきゃいけない」。そのため、学び続ける姿勢が不可欠であり、人間性を活かした信頼関係の構築が成功の鍵となる。さらに、自分自身をブランドとして売り出し、顧客とのつながりを強化することが継続的な成長につながる。(内田游雲)
内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者(特にスモールビジネス)に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
50歳を過ぎてからスモールビジネスを始めようとすると、「もう遅いのでは?」と遠慮がちになる人が多い。しかし実際には、人生経験を積んだ50代こそスモールビジネスの大きな可能性を握っている。なぜなら、これまで培ってきた知識や人脈、そして多彩な人生経験が、そのまま社長の資質として生かせるからだ。
小さな商いが勝ち抜く為のリアル
スモールビジネスの強みは何かというと、社長がお客の一番近くにいることだ。顧客との距離が近いほど、本当に必要とされるサービスや商品のヒントが得やすい。大企業にはない身軽さと親近感こそが、小さな商いにおける最強の武器になる。
ただ、華やかなイメージの裏側には、現実的な苦労も潜んでいる。中小零細企業や個人事業主は、お金が無くて人もいない。これは当たり前の話だ。つまり、「社長は全てやらなきゃいけない。経営計画の立案もマーケティングも、セールスも経理も。ぜーんぶやらなきゃいけない。」ということになる。20代や30代で起業した人と比べれば、体力や時間的余裕の面ではどうしても不利を感じるかもしれない。しかし、そこで引いてしまってはスモールビジネスの醍醐味を味わえない。
むしろ、50代だからこそ得られる落ち着きと実行力を武器にすれば、どんな局面でも粘り強く立ち回れる。若い頃には気づけなかった顧客の微妙な変化や、社会のニーズを読み取る力も培われているだろう。「でも、自分には今さら新しいことを学ぶ余裕なんてない」と感じるかもしれないが、そこで諦める必要はない。実は、年齢を重ねているからこそ学びの効率は上がる面がある。現場の苦労を知っている分、ただの知識ではなく実践に直結するノウハウを吸収しやすいのだ。
さらに、ビジネスにおける成功の定義も50代以降は変化する。たとえ急成長が難しくても、自分の足元を固めながら地に足の着いた経営を続けるほうが、長期的には安定感を得やすい。人生経験が豊富であればあるほど、人の心や社会の裏表を見極める力が磨かれているはずだ。そうした「人間を見る目」や「地道さ」が、まさにスモールビジネスの強みと直結する。今のままの自分では不安だと感じるなら、自分を再定義するいいチャンスだ。50歳を機に、社長としての在り方をもう一度見つめ直すと、新たな強みがどんどん見えてくるはずだ。
社長自身が最大の強みになる理由
スモールビジネスでは、大企業のようにブランド力や広告予算に頼れないのが当たり前。そこで大きな差を生むのが、社長自身の存在感だ。顧客は「あなた」から商品やサービスを買いたいのであって、他の誰かでは代用できない。極端な話、誰が販売しても同じだと思われてしまうなら、大手企業やネットショップのほうが安定感も価格面も有利だろう。だが、小さな商いの場合、「あなただからこそ応援したい」「あなただからこそ話を聞きたい」というパーソナルな魅力が重要になる。
実は、この「社長の人間性」こそが最大のUSP(独自の売り)になる。大企業と同じ戦い方をしても勝ち目は薄い。けれど、一人ひとりの顧客にしっかりと向き合いながら信頼を積み上げる姿勢は、他には真似できない絶対的な価値になる。特に50代の社長には、若い起業家にはない人生経験がある。転職、家族のこと、親の介護、さまざまな苦労を乗り越えてきた人が多いだろう。だからこそ、同年代の顧客や年下の顧客からも「この人なら分かってくれるはず」と思われる可能性が高い。

ただし、その強みを自分で自覚していない社長は少なくない。「たかが自分」と考えてしまい、わざわざ自分のことをアピールするのを恥ずかしがる人も多い。だが、自分を売り込まなければ、スモールビジネスで存在感を示すのは難しい。結局、どれほど商品が優れていても、「誰が売っているか」が大きな決め手になるのが現実だ。だからこそ、「あなた」の経験や個性をもっと顧客に伝えることが必要になる。SNSやブログなどで地道に発信し、少しずつファンを増やしていくやり方は効果的だ。
社長自身が武器になると認識した瞬間から、ビジネスの視点が変わる。自分の強みを分解し、それをどう顧客に届けるかを考えるプロセスは、実に楽しい。「社長は全てやらなきゃいけない」という大変さも、この楽しさを伴えば乗り越えやすくなるはずだ。顧客と接するのが好きなら、営業も苦にならない。数字に強ければ経理を楽しめるかもしれない。強みが見つからないと思うなら、小さな成功体験や、人から褒められたポイントを書き留めてみるだけでも新たな発見がある。
勉強熱心さが経営を変えるカギ
ここで強調したいのが「勉強熱心であること」の大切さだ。スモールビジネスの社長に必要なスキルは幅広い。経営計画を立てる力、マーケティングの知識、セールスのノウハウに加えて、経理や税務の基本的な理解まで求められる。だが、最初からすべて完璧にできる人などいない。大切なのは、足りない部分が見えたらそれを補うために学び続ける姿勢だ。
特に50代以上になると、学生時代のように腰を据えて勉強できないと感じるかもしれない。しかし、実地で必要なことを学ぶのは意外と面白い。たとえば経理の知識を学ぶと、「だからこの費用が経営を圧迫していたのか」と納得できる瞬間がある。マーケティングを勉強すれば、「なるほど、ここを強調すれば売れやすくなるのか」と自分のビジネスに直結する発見がある。
さらに言えば、勉強熱心であることが顧客にとっての安心材料にもなる。「この社長は常に新しいことを吸収している」「いいものを提供しようと努力している」と分かれば、人間的な魅力だけでなく信頼感も増す。たとえミスがあっても、誠実に学びながら改良していく姿を見せれば、お客さんも自然と応援したくなるのが人情だ。
勉強というと何かと気が重い印象だが、いまはオンライン講座や専門家のブログ、動画など情報源は多彩にある。スマホひとつで新しい知識をすぐ仕入れられる時代だから、好きな時間に好きな場所で学べる。ほんの15分程度でも、毎日の習慣にすれば1年後の知識量は驚くほど増える。大事なのは「学びに終わりはない」という気持ちで、常にアンテナを張り続けること。スモールビジネスの強みは、こうした地道な努力がそのまま成果につながりやすい点にある。
人間性で顧客の心をつかむ
勉強熱心さと並んで、スモールビジネスの社長に欠かせないのが「人間性」である。お客は結局、「この人だから買いたい」「この人と話していると元気になる」といった感覚をとても大事にする。とりわけ50代の経営者は、若い世代よりも話題の幅が広く、人間関係の機微を心得ている人が多い。その経験値が顧客とのコミュニケーションで大いに力を発揮する。
ただし、「人間性」は押し付けになってはいけない。自分の自慢話や苦労話を延々と続けても、相手にとってはストレスでしかない。大切なのは、相手の話に耳を傾け、共感する姿勢を持つことだ。自然体で接することで、「この社長には何でも話しやすい」と思ってもらえれば、その信頼関係は短期間で築ける。

さらに、「何かあってもこの社長なら全力でサポートしてくれそうだ」という安心感を与えるのも、人間性の力だ。スモールビジネスの場合、商品を売ったら終わりではない。むしろ、購入後のフォローこそがリピートや口コミにつながる。商品にトラブルが起きた時に、すぐ駆けつけてくれたり、親身に相談に乗ってくれたりする社長は本当に頼りになる。そうやって「人間として安心できる存在」になることで、顧客からの信頼度が格段にアップするのだ。
人間性を磨くといっても、無理にキャラクターを作る必要はない。素の自分が一番楽であり、それが結局は長続きするポイントでもある。自分が楽しめるコミュニケーション方法を見つけるのがおすすめだ。直接会うのが好きな人は、顧客との対面の場を意識して増やす。オンラインでのやり取りが得意なら、SNSやメールをこまめに活用してみる。自分に合ったスタイルで人間性を表現すれば、それだけで強い武器になる。
自分を活かすマーケティング戦略
スモールビジネスでは、大型広告や派手なキャンペーンを打つ資金力がない。そこでポイントになるのが、自分自身をどれだけ上手に売り出せるかというマーケティング戦略だ。特に50代以上の社長は、過去の経験や人脈をフル活用できる。たとえば昔の仕事仲間や、趣味を通じた知人にアプローチするだけでも立派な営業チャネルになる。
実は、SNSやブログなどを活用した情報発信は、思っているほど難しくない。何も毎日長文の記事を書き続ける必要はない。今日あった面白いエピソードや、お客様からいただいた嬉しい声、業界の最新情報などをポップにまとめるだけでも十分価値がある。ポイントは「あなたらしさ」をしっかり出すこと。テンプレートのような当たり障りのない文章では、せっかくの人間性が伝わりづらい。肩の力を抜いて、自分の言葉で語るからこそ、ファンが増えていく。
もうひとつ大事なのは、商品よりもまず「社長自身」を知ってもらう工夫をすることだ。いくら素晴らしいサービスでも、どんな人が提供しているのかが分からないと信用は得にくい。どんな理念や想いを持ってビジネスをしているのかを伝えれば、そこに共感した人たちが「この社長に頼みたい」と思うようになる。大企業にはないパーソナライズが武器になるのだから、積極的に自分を見せるべきだ。
また、マーケティングは単発ではなく「仕組み」にしてこそ効果を発揮する。たとえばSNSからブログへの導線を作り、ブログで顧客の問い合わせ先を案内するといった流れを用意しておく。顧客が「気になる」「詳しく知りたい」と思ったときに、自然とあなたのビジネスにたどり着ける仕掛けが重要だ。細かい工夫の積み重ねが、手堅い売上とリピーターの確保につながる。
胸を張って社長業を全うする秘訣
最後に、50歳を過ぎたスモールビジネス経営者が胸を張って生き抜くためのポイントをまとめる。まずは「社長が自ら売ることをやめない」姿勢が大切だ。スモールビジネスの強みは「社長がお客の一番近くにいること」。ここを手放してしまうと、他社にはない魅力が一気に失われる。よく「営業スタッフを雇って楽をしたい」と考えがちだが、顧客は「あなたから買いたい」のである。だからこそ、最前線でお客と対話しながらニーズを拾い、商品やサービスを磨き続けることが肝心だ。
次に、失敗を恐れず挑戦し続けるメンタリティを持つこと。確かに50代以上ともなると、傷つくことを避けたい気持ちも出てくる。しかし、新しいことを学び、新しい顧客と出会うことで得られる喜びは何歳になっても色褪せない。むしろ、年齢を重ねたからこそ分かる事柄も多いはずだ。小さな失敗なら取り返しもきくし、一つひとつのチャレンジが知見となって経営の精度を高めてくれる。

そして何より、社長自身が仕事を楽しんでいる姿を見せることが最高のブランディングになる。つらそうに仕事をしている人からは、どんなに優れた商品でも買いたくないものだ。逆に、楽しそうに笑いながらビジネスをしている社長を見ると、「この人と一緒に盛り上がりたい」という気分になる。それが自然と売り上げやリピーター獲得につながる。
スモールビジネスは大企業と違って規模の限界もあるが、その分だけ社長自身の魅力を全面に出せる。「社長の資質」「勉強熱心」「人間性」という要素を意識しつつ、50代以上だからこそ生かせる経験と知恵を武器に、小さな商いをコツコツと続けてほしい。忙しさに押し流されそうになったら、改めて「社長は全てやらなきゃいけない」という原点を思い出すといい。それは苦労の象徴というより、スモールビジネスを存分に楽しむための合言葉でもあるのだ。