気の経営

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内田游雲（うちだ ゆううん）
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングや人生のコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めて経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究－洩天機－」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営（メルマガ編）】も発行中（無料）

私が、コンサルティングを行う時は、値引きはなるべくしないように伝える。なぜなら、値引きのほとんどが無駄に終わるからだ。その値引きは本当に必要なことなのか。もし、しなくていい値引きであれば、すぐに止めてしまうことだ。それだけで、あなたの会社やお店の利益は確実に増えることになる。

流通業の世界には「チェリーピッカー」という言葉がある。小売・マーケティング関連の用語で、普段は決して買い物をしない客なのに、特売の時期にのみ来店し、特売品のみ購入して帰るお客のことだ。別名「バーゲンハンター」などとも言われる。

そもそも、目玉商品というのは、それだけを購入されても意味はない。お店側としては、その商品と一緒に他の商品を買ってもらったり、そのセールをきっかけに他の時期にも買い物に来てもらうためにやっているのだ。

それなのに、安い時だけ来て、仕入れに苦労した目玉商品だけを買っていくのだから、これは、お店にとっても何のメリットもない。それどころか、迷惑になるお客だ。だったら、さっさと値引きで誘客することは止めるべきなのである。

値引きセールというのは、最も安易な集客方法で、たしかに、それでお客さんは集まるのだが、そのお客のほとんどが、値引きを目的に集まっているのだから固定客にならない。他で、もっと安売りするお店が現れたら、一斉にそちらに移動する。だから、値引きで集客することはご法度なのである。

割引クーポンなどは、その典型的な例だ。

「そんなのわかっているよ。
　うちはそういった値引きは一切していない」

こう言われる経営者も忘れているもう一つの値引きがある。それが、ポイントカードだ。これは、FSP（Frequent Shoppers Program）と呼ばれるマーケティング手法に分類される。たくさん買い物をするお客さんを、ポイント還元でえこひいきするものだ。

ポイントカードとは、ポイントが貯まれば、たとえば1000ポイントで1000円値引きといったものだ。当然、よく利用するお客ほど、ポイントが貯まることになる。

いいお客を囲い込もうという発想から生まれたもので、これで、一時的には上手くいくお店も多かったのだ。しかし、今は、そう簡単ではない。競合店がどこもやっていないなかで、その店だけがポイントカードを導入すれば、それだけで、売上も上がった。しかし、今は、ポイントカードなんて、どこの店でもやっているのだ。
そうなるとどうなるか？

お客は、全ての店のポイントカードを持つだけである。あなたのお店しか、ポイントカードが無い時代であれば、どうせ買うならその店でということになる。しかし、全てのお店がポイントカードを発行していると、お客さんは全てのお店のポイントカードを持つだけだ。差別化になどなる訳はないのである。

しかも、ご丁寧に、今の財布のウリは、こうしたポイントカードをいかに整理して収納できるかになっている。更に、スマホを使ったポイントサービスなど、自分が、よく行く店以外、どれだけポイントアプリがあるかも本人にもわからない。
もはや、ポイントカードにお客を囲い込む力など備わっていないのである。

そして、さらに酷いことに、今では、統合されたポイントカードがある。楽天ポイントとかVポイントだ。

よく考えてみればいい。そのポイントは、あなたのお店で買い物した時についたポイントだろうか。他の店で買い物する為のポイントを、なぜ、あなたが値引きせにゃならないのか。さらには、他のお店の為に、なぜ、あなたのお店がポイント分の値引きを負担しなきゃならないだろうか。根本的に考え方が違っているのだ。

しかも、恐ろしい事に、多くのお客は、こうしたポイントカードの特典には、ほとんど興味を持っていない。例えば、あなたは今持っている全てのポイントカードの満点時の特典を覚えているだろうか。おそらく、そんな人、一人もいないはずだ。たとえ、覚えていたとしても、一部のカードだけなはずである。

このように、多くのお客は、ポイントカードにどんな特典があるのかを意識せずに貯めている。そして、結果的に特典をもらっているだけなのだ。これは、つまり、しなくてもいい無駄な値引きをしているということに他ならない。

お客のほとんどが、店から
「ポイントカードをお持ちですか？」
そう聞かれるから出しているだけである。

私は、Vポイントを使えるからという理由で、レストランを選んだことは一度もない。このお店に行きたいと思ってお店を選び、食べ終わってお会計の時に聞かれるから、ポイントで割引してもらうだけだ。ちなみに、私のVポイントカードは10万ポイント以上溜まっている。これは、ちょこちょことしたアフィリエイト報酬を、Vポイントに入れていたからだ。このポイント残高を見ると、お店の人は、たいていギョっとする。

もちろん、使ったポイントは、後からお店に支払われるが、では、その基になる金はというと、何処かのお店が負担しているということだ。この場合、お店で何かを購入した時にポイント分を負担していたり、加盟金やシステム資料料として負担しているわけである。その場での値引きではないにしても、どこかで、その分を値引きしていることになる。

しかし、お客側からすれば、特にありがたいとも思わずに、
「なんか、得しちゃった！」
程度にしか思っていない。

だから、こういったポイント還元性のカードは止めたほうがいいのだ。それを止めたからと言って、売上げが落ちることはまずない。

なぜなら、お客はポイントが付くからその店を利用しているのではなく、そのお店の商品が好きであったり、雰囲気が好き、スタッフが好きだから、繰り返し利用しているのだ。決して、ポイントカードが好きで、そのお店を利用しているのではないのである。

それなのに、店側が勝手にポイントを付けているだけだ。これはつまり、お店がしなくてもいい無駄な値引きを勝手にしているだけだということである。だから、こうしたポイントカードを廃止するだけで売上は下がらずに、利益が上がっていくことになる。

一度、よく考えてみることである。そのポイントの為の値引きは本当に必要なことなのか。そして、しなくていい値引きであれば、すぐに止めてしまうことだ。それだけで、あなたお店や会社の利益は確実に増えることになる。