人は誰もが死にたくないと願う。ほとんどの人がそうだろう。現代社会では、金が生存の為の最も重要なものになっているのだから、どうしても、金をたくさん集めたくなる。どこまでも、「死にたくない。安心したい。」と心の中が囁き続ける。だから、人間はどれだけ金があっても満足できないのだ。人は金持ちになりたいと誰もが強く願う理由である。(内田游雲)
profile:内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。中小企業や個人事業等の小さな会社のコンサルティングを中心に行う。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的コンサルティングには定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めて経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「洩天機-運の研究」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
人間には、もともと5つの本能的衝動があり、その本能的衝動が満たされないと苦痛を感じ、恐怖につながっていく。
その5つとは
「生存欲求」
「群居衝動」
「自己承認欲求」
「性欲」
「好奇心」
この5つの衝動である。
本能からくる衝動であるから、それは理屈ではない。
突き動かされ居ても立っても居られない状態になるということだ。
これは、全ての人に共通で、普通の人間であれば例外なく当てはまるものだ。
誰もが死にたくないと願う
「生存欲求」だ。
これは、すべての生物が持っているもので、「生きたい」、「死にたくない」ということだ。なんだ、当たり前じゃないかと思うかもしれないが、この、「生きたい」、「死にたくない」というところから、「飢え」への恐怖が生まれてくる。
昔はこの飢えを満たすものは、肉であり魚だった。しかし、現代ではそれは「金」になる。金があれば、現代社会においては、大抵のモノやサービスと交換することができるからだ。
つまり、金を払うと、ほとんどの物を所有できたり、また、あらゆるサービスを受けたりすることができる。そのため、人は金持ちになりたいと誰もが強く願う理由である。
「金をたくさん持ってさえいれば、明日飢えて死ぬことはない」
だた、こう思うのである。
今の日本では、実際に金がなくても簡単には飢え死にはしないが、それでも太古の昔から植え込まれた記憶によって、金が、「生存」のために必要なものになっているのだから、どうしても、金をたくさん集めたくなるのだ。
金が権力を持つ構図
それだけではない。
だれもがこうした「飢え」に対する恐れを持っている以上、それを開放する金は、他人に対して大きな影響力を持つことができる。
つまり、金があれば、他人を支配することが可能になるのだ。
それは、他人を支配し動かすことができる権力となっていく。
「金」の持つ力の源泉は、こうした生存欲求からきている。
この「生存」という本能的な衝動は、非常に大きなもので、
どこまでも、
「死にたくない。死にたくない。」
「安心したい。安心したい。」
そう、心の中で囁き続ける。
だから、人間はどれだけ金があっても満足できない。
どれだけ金持ちになったとしても、
「あともう少し金があったら安心できるのに」
そう感じてしまうのである。
多くのモノに囲まれていると安心する
さらに、この衝動は金にとどまらない。
金からモノを所有するということに広がっていく。
多くのモノに囲まれていると、それだけで、安心感を感じることができる。そして、人はできる限り多く物を所有したいと走り回ることになるのだ。
何かを集めるコレクターの心理の根底には、この、物をたくさん持って安心したいという騒動が隠れている一方で、その集めた世界を支配しているという喜びが生まれてくるのである。
もちろんこれは、悪い事だけではない。
すべての人間が、「生存欲求」による、こうした「飢え」への恐怖心を抱いていて、それが反面、働く意欲の原動力になっている。
人は「飢え」たくないので、一生懸命働くし、努力してより安定的な生活を送りたいと願う。「生存欲求」は、新しい技術や能力を手に入れたり、勉強して知識を得るためのモチベーションの根底にあるのだ。