肉体的な条件から、食物連鎖の底辺にいた人間は、集団を作ることで、力を得たのだ。一人ではなく、複数で狩りをすることで、自分より大きな獲物を仕留めることもでき、さらに、身を守れるようになったのだ。この太古から遺伝子に刻まれてきた記憶が、「孤独は怖い」という衝動をもたらすのだ。(内田游雲)
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内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトのテーマ「気の経営」とは、この世界の法則や社会の仕組みを理解し、時流を見極めてスモールビジネス経営を考えることである。他にも運をテーマにしたブログ「運の研究-洩天機-」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)
5つの本能的衝動の2つ目は、
「孤独は怖い」
ということである。
これは、群居衝動と呼ばれるものだ。
【参考記事】:
独りは怖い!誰かと一緒にいたい
つまり、
「独りは怖い」
「誰かと一緒にいたい」
こうした衝動である。
人間がこうした衝動を持つのは、原始時代に、その原因を遡ることができる。
太古の昔、人間は非常に弱い動物であった。現代のような科学技術もなく、大きな牙もなく、硬い皮膚も巨大な体もなく、そして、走るのも遅い人間が、一人で歩いていたのでは、あっという間に猛獣に襲われて餌にされてしまっていた。
こうした肉体的な条件から、食物連鎖の底辺にいた人間は、集団を作ることで、力を得るようになった。一人ではなく、複数で狩りをすることで、自分より大きな獲物を仕留めることもでき、さらに、身を守れるようになったのだ。
この太古から遺伝子に刻まれてきた記憶が、「孤独は怖い」という衝動をもたらすのだ。
誰かと一緒にいたいという衝動
現代の日本では、もちろん一人でいても、生命の危険にさらされることは、ほとんどないだろう。しかし、そんな安全な中でも、孤独になると底知れぬ空虚感と恐怖を感じ始めてしまう。
そして、孤独感から開放され安心を得たい感情から、誰かと一緒にいたいという衝動に駆られるのである。これが、方向を変えると、誰かに愛されたいとなるし、友達が欲しいという欲求になる。
さらに、女性は、男性に比べて、肉体的に弱い(パワーが無い)為に、常に集団の中にいることを必要とした。そして、男性が外に狩りに行き、女性は、集落にいて子育てや雑務を担うようになっていった。
その結果、女性の方がコミュニケーション能力は高くなったのだが、反面「孤独」に対する恐怖が、より、大きくならざるを得なかったのである。
現代社会の中の孤独感
さらに、今の時代は、それぞれが、自分の好きな曲、好きな歌をイヤホンで聞き、ゲームやSNSをみながら街を歩いている。電車やバスの中でも同じように、自分の世界に閉じこもったままだ。
自分の好きな世界に、ずーっといられるのは、確かに、とても心地いいのだが、反面コミュニケーションの壁を作り出してしまってもいるのだ。自分の世界、自分の趣味嗜好の中で、浸っていると、他人との接点が著しく減ってしまうことになる。
コミュニケーションとは、言い換えればお互いの共通項を見出しながら、それぞれの世界をぶつけていくことだからだ。しかし、個々が分離している今の時代には、その共通項を見つけることができなくなっている。
自分の嗜好の中だけの世界の言葉は、他の世界の人には通じない。だから、他の嗜好の人と話していると、外国人と話すみたいなものだ。
人間は、コミュニケーション無しに生きては行けない動物である。特に女性は、その傾向が顕著である。最近は、こうした孤独感が広く蔓延しているため、SNSといった擬似的な繋がりにさえ価値を求めるようになっているのだ。
現代は、知らない誰とでも、すぐに繋がれて連絡が取れる。しかし、多くの人が、大きな孤独を抱えて膝を抱えてうずくまっているのだ。
これが「孤独への恐れ」つまり、群居衝動の正体である。